本研究では、ヒトの二足歩行の基盤となった体幹部の回旋運動について、機能形態学的な面からヒトと非ヒト霊長類を比較した。具体的には、研究①胸腰椎の回旋可動域の比較、研究②胸腰椎の幾何学的形態計測、研究③胸腰椎のねじり運動シミュレーションの三つの側面から比較機能形態学を実施した。 2022年度は主に、研究①胸腰椎の回旋可動域の測定、及び、研究②胸腰椎の幾何学的形態計測を進めた。いずれも計画通りに進んでおり、データ収集が終了した。 研究①では、光学式モーションキャプチャシステムを使って、肩甲帯を取り外したニホンザル筋骨格標本の胸腰椎の回旋運動域を測定した。非ヒト霊長類における胸腰椎の回旋運動域を測定した研究はこれまでになく、非常に貴重なデータを取得することができた。また、以前CT装置を用いて測定した全身屍体の結果と比較したところ、肩甲帯の有無によって回旋運動域に変化が生じることが明らかになった。これらの研究結果をまとめ、現在、国際誌に論文を投稿中である。 研究②では、三次元表面形状スキャナーを用いて、霊長類7属26個体463個の胸腰椎のデータを収集した。幾何学的形態計測および伝統的な形態計測を実施し、同一種間での胸椎と腰椎の分化の程度、およびその種間比較を実施した。その結果、回旋に関連する部分の形態はヒトと非ヒト霊長類でほとんど差がないことを明らかにした。また一方で、オナガザル上科とヒト上科では、胸椎と腰椎の形状間における類似性に差があることを発見した。本研究結果について論文を執筆し、現在、国際誌に投稿中である。 研究③については、筋骨格運動シミュレーションで使用するモデルを作成する方法の習熟に努めた。今後は、シミュレーションソフトウェアOpenSimの使い方をマスターするとともに、実際にモデルを作成してシミュレーションを動かすことが課題である。
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