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2022 年度 実績報告書

ヤマカガシにおける餌由来毒素の多様化とその生理学的・生態学的要因の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J15206
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

井上 貴斗  京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワード生物毒素 / エサ由来毒素 / 化学生態学 / 化学的防御 / Bufadienlide 類 / Rhabdophis tigrinus
研究実績の概要

・液体クロマトグラフィー (LC)/質量分析法 (MS) を用いて、日本各地のヤマカガシおよびヒキガエルの毒液の化学分析をさらに進め、ヤマカガシにおいて地域性の高い bufadienolide 類 (BD 類) を一つ見出し、精製段階まで進めた。
・ヤマカガシに対する BD 類給餌実験により、ヤマカガシ体内における BD 類の変換反応を確認できる系を確立した。これにより、日本のヒキガエルの普遍的成分、bufalin がヤマカガシの体内で化学変換され、頸腺に蓄積されることを実験的に証明した。
・ヤマカガシから、ゲノム DNA を外注可能なクオリティで抽出する方法を確立し、ゲノムのアセンブリおよび繰り返し配列の推定まで終え、ゲノムサイズが 4.03 Gbという結果を得た。
・BD 類の標品や、ヤマカガシ頸腺液のメタノール粗抽出物の毒性測定を、ヒトがん細胞に対する抗腫瘍活性試験により、簡便に行うことを可能にした。本手法により、BD 類における官能基の位置や向きの一つの違いが毒性に影響を及ぼすこと、頸腺液の毒性には個体差があることが予想された。
・ヤマカガシの捕食者である猛禽類の眼球も着実に集めることができ、眼球の入手が難しい潜在的捕食者であるイノシシの新鮮な眼球も入手できた。
・LC を用い、 頸腺液中の BD 類の総量 (絶対 BD 量)をハイスループットに定量する方法を考案し、この手法を用いて、ヤマカガシのもつ BD 類の総量や濃度の個体差や、それらに影響を与える内在的要因を調査し、ヤマカガシの BD 類蓄積に関する重要な基礎情報を得た。本研究成果を学会で発表し、また、論文としてまとめ報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

地域性の高い BD 類を一つ見出し、この化合物の単離精製を着実に進めている。
また、多数のヤマカガシの採集、飼育、bufalin 給餌実験を経て、これまで生態学的なデータからでは仮説の域を出なかった、「毒源である日本のヒキガエルの普遍的成分、bufalin がヤマカガシの体内で化学変換され、頸腺に蓄積される」ことを実験的に証明した。ヤマカガシが活動的である限られた期間でしか生物試験を実施できないことを考えると、一年目に得られた成果は大きい。
ヤマカガシの尾部付近の筋肉から DNA を抽出し、ゲノムのアセンブリおよび繰り返し配列の推定まで終え、ゲノムサイズが 4.03 Gbという結果を得ることができた。
BD 類の標品や、ヤマカガシ頸腺液のメタノール粗抽出物の毒性測定を、ヒトがん細胞に対する抗腫瘍活性試験により、簡便に行うことを可能にした点は今後の研究を展開するうえで非常に価値がある。ヤマカガシの捕食者である猛禽類の眼球も着実に集めることができており、潜在的捕食者だが、眼球の入手が難しいイノシシの新鮮な眼球も入手できた。
さらに、液体クロマトグラフィーを用い、 頸腺液中の BD 類の総量 (絶対 BD量)をハイスループットに定量する方法を考案し、この手法を用いて、ヤマカガシのもつ BD 類の総量や濃度の個体差や、それらに影響を与える内在的要因を調査し、ヤマカガシの BD 類蓄積に関する重要な基礎情報を得られた。本研究成果を素早くまとめ上げ、化学生態学分野で有名な国際雑誌、Journal of chemical ecology に掲載された成果は大きい。

今後の研究の推進方策

・地域性の高い BD 類の探索および同定をヤマカガシとヒキガエル両生物において進める。一年目に見出した地域性の高い BD 類の構造を最終的に核磁気共鳴法を用いて決定する。
・ヤマカガシに対する BD 類の給餌実験により、BD 類変換能力の地域差に関して更なる情報を得る。また、BD 類給餌後のヤマカガシの各種臓器を化学分析することで、変換場所の特定を試みる。
・ゲノムのアセンブリおよび繰り返し配列の推定まで終えたヤマカガシ DNA データのクオリティチェックを進める。また、頸腺や種々の組織における RNA シーケンスを行い、そのデータとゲノムデータを照合することで、今後の遺伝子領域の推定、ヤマカガシにおけるBD類の変換遺伝子、酵素の解明を目指す。
・BD 類のヒト肺がん由来細胞に対する抗腫瘍活性試験を有効活用し、ヤマカガシ頸腺毒の毒性評価を継続する。また、ヤマカガシの捕食者の眼球由来Na+/K+-ATPaseに対する阻害活性測定を進める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Intrinsic Factors Associated with Dietary Toxin Quantity and Concentration in the Nuchal Glands of a Natricine Snake Rhabdophis Tigrinus2023

    • 著者名/発表者名
      Inoue Takato、Mori Akira、Yoshinaga Naoko、Mori Naoki
    • 雑誌名

      Journal of Chemical Ecology

      巻: 49 ページ: 133~141

    • DOI

      10.1007/s10886-023-01415-4

    • 査読あり
  • [学会発表] ヤマカガシ (Rhabdophis tigrinus) の餌由来毒素の量と濃度に関連する内在的要因について2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴斗、森哲、吉永直子、森直樹
    • 学会等名
      日本農芸化学会 2023 年度大会 (2023/3/16に発表)
  • [学会発表] New insights into dietary toxin metabolism: diversity in the ability of the natricine snake Rhabdophis tigrinus to convert toad-derived Bufadienolides2022

    • 著者名/発表者名
      Takato Inoue, Ryu Nakata, Alan H. Savitzky, Naoko Yoshinaga, Akira Mori, Naoki Mori
    • 学会等名
      The ISCE-APACE 3rd Joint Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] ヤマカガシ (Rhabdophis tigrinus) におけるヒキガエル由来毒性ステロイド bufadienolide 変換能力の多様性2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴斗、中田隆、Alan H. Savitzky、吉永直子、森哲、森直樹
    • 学会等名
      日本爬虫両生類学会第 61 回大会

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公開日: 2023-12-25  

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