・液体クロマトグラフィー(LC)/質量分析法(MS)を用いて、日本各地のヤマカガシおよびヒキガエルの毒液の化学分析をさらに進め、ヒキガエルとヤマカガシにおいて地域性の高いbufadienolide類(BD類)をそれぞれ一つずつ(それぞれ化合物Aと化合物Bとする)見出し、その化学構造を決定した。 ・上で述べた、ヒキガエルにおいて地域性が高かった化合物Aの標品をヤマカガシに給餌し、ヤマカガシにおいて化合物Aがどのように変換されるか解析した。その結果、化合物 Aは上で述べた、ヤマカガシにおいて地域性が高かった化合物Bの前駆体であることを証明した。そして、上で述べたヤマカガシにおけるBD組成の地域特異性には、毒源であるヒキガエルのBD組成の影響が強く反映されていると推測した。 ・上記化合物AとBの毒性をヒトがん細胞を用いて評価した。 ・単一個体群内におけるヤマカガシのBD組成に見られる性差・季節差をLC/MSを用いて解析した。また、妊娠したメスのヤマカガシを用いた産卵試験、およびヒトがん細胞を用いた毒性試験によるアプローチを加えることで、妊娠したヤマカガシのメスにおけるBD類の子への母体供給について、その供給経路や、供給における成分動態とその意義、供給による母ヘビ、子ヘビの化学防御力への影響を解析した。その結果、ヤマカガシのメスから卵黄、そして次世代の子ヘビまでにおけるBD類の成分動態とその意義について、重要な知見を得た。特に、ヤマカガシにおける特徴的なBD類変換反応の一つであるC-3位水酸基のエピメリ化の主な意義について推測できたことは大きな成果である。さらに本研究から、ヤマカガシにおいてBD類は、孵化後の幼体の生存において特に重要な役割をもつ可能性が高いと明らかにし、BD 類の生態学的意義の理解をさらに深めることができた。 (現在、これらの成果は投稿準備中であり、詳細は差し控える)。
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