2023年度は、前年度で着目した矩形ナノ粒子アレイに基づく光制御の実現に取り組んだ。矩形ナノ粒子アレイは、周期と矩形ナノ粒子のアスペクト比のそれぞれの値だけでなく、周期に占めるナノ粒子の空間充填率によって、表面格子共鳴の交差の形を制御することができる。特に、このスペクトル上の交差が電気モードと磁気モードからなる場合は、散乱場の干渉によって前方あるいは後方散乱が打ち消される現象が発生する可能性がある。この異方的な光散乱はKerker効果として知られており、これを用いることで、より高度な指向性の制御が可能となる。 本年度は酸化チタン矩形ナノ粒子アレイの作製、および酸化チタンナノ粒子のアスペクト比を制御することによるKerker効果、とくに表面格子共鳴同士の干渉に基づくLattice-Kerker効果の実現に取り組んだ。酸化チタン矩形ナノ粒子アレイは、ナノインプリントによるチタンナノ構造の形成と、チタンの熱酸化を利用して作製した。作製した酸化チタン矩形ナノ粒子アレイにおいて、電気および磁気表面格子共鳴の励起が、実験および電磁場解析によって確認された。また、酸化チタン矩形ナノ粒子アレイに対して、色素を含有したPMMA膜を塗布し、発光増強度を測定したところ、特定のアスペクト比に関して、電気表面格子共鳴と磁気表面格子共鳴の交差する角度および波長において、Lattice-Kerker効果に由来する前方方向に異方性を持った発光増強を確認した。 2022年度と2023年度を通じて、磁気光学効果の増強に向けたナノ構造およびそこで励起される光学状態の設計を実施し、ナノ構造と強磁性体の配置や、磁気光学効果において効率的な増強の実現が期待できる光学設計などの知見が得られた。
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