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2022 年度 実績報告書

面性不斉を有する環状ホスト分子による集合体構築とその機能開拓

研究課題

研究課題/領域番号 22J15357
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

和田 圭介  京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワードピラー[5]アレーン / 面性不斉 / 動的不斉 / 結晶化 / エキサイプレックス / 分子認識
研究実績の概要

本研究では、環状分子ピラー[5]アレーンの特性である面性不斉及び、機能化の簡便さに着目し、分子が作るナノ空間の活用に取り組んでいる。前者に関して、ピラー[5]アレーンの動的な面性不斉は側鎖に不斉炭素を導入することでジアステレオマーの関係を形成する。得られたジアステレオマーはゲスト溶媒分子により片方の面性不斉の誘起が可能であった。ゲスト溶媒で片方の面性不斉を誘起した後、嵩高い置換基を導入することで動的な面性不斉を静的な面性不斉に変換する事が可能であった。これにより、今までは困難であった動的な面性不斉の制御後の不斉情報の保存が可能になった。さらに、溶液状態での面性不斉固定に加えて、結晶化のプロセスを用いることで偏りをほぼ100%近い状態で固定する事にも成功した。
また、ピラー[5]アレーンの機能化に注目し共役系分子の導入による発光材料の開拓も行った。ピラーアレーンの1つのユニットにカップリング反応を行うことで、共役系ユニットを含むピラー[5]アレーンを合成した。蛍光測定により、蛍光スペクトル中に二つのピークを有するDual Emissionを示す事が明らかとなった。さらにこの二つの発光ピークに対して得られた励起スペクトルが一致したことから、二つの発光は同じ基底状態に由来しており励起状態において構造緩和があったと考えられる。また、溶媒極性を変化させた蛍光測定及び、Lippert-Mataga Plotsの結果から、局所的な励起による蛍光 (LE蛍光) と電荷移動蛍光によるエキサイプレックス蛍光 (Ex蛍光) の2成分に帰属することができた。ゲスト分子を滴下すると、Ex蛍光の減少とLE蛍光の増加が観測された。これはゲスト分子が共役系分子の立体構造を制限したためであると考えられる。 さらに、同様の骨格を有する高分子量体PA-Polymerの合成にも成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は主にピラー[5]アレーンの面性不斉と集合体の化学を用いた機能開拓を目的としている。前者に対してはピラー[5]アレーンの動的な面性不斉のゲスト認識によるスイッチングとその固定化に成功しており、概ね研究計画の主題に沿って進行できていると考えている。さらに、結晶化による集合体の形成の利用により、高度に偏りを持った面性不斉を有するキラル空間を創出することが出来ている。また、キラル空間の機能開拓の準備段階として、共役系分子を導入したピラー[5]アレーンの単分子状態での発光特性を調査した。ピラー[5]アレーンの内部空孔でのスルースペースでの相互作用に由来する発光を観測する事ができた。また、環状構造に由来し、ゲスト分子に応答した発光性を示す事が既に分かっており、即座にキラル空間を組み込んだ機能開拓への展開に移る準備が出来ている。このことからおおむね順調に研究計画が進行していると判断している。

今後の研究の推進方策

現在までに、ピラー[5]アレーンの面性不斉を結晶化などの集合体構築により高度に偏らせることに成功したことに加えて、共役系分子に導入により発光材料の構築にも成功した。今後は、この面性不斉の集合体構築を如何に機能性の材料に応用できるかの研究に展開していきたい。初めに、面性不斉が固定されたピラー[5]アレーンに発光部位を導入しその後、超分子ポリマーを形成させることで溶液中での発光特性を評価する。単分子での先行研究によりゲスト分子に応答した発光変化を示す事が期待される。また、インターロック分子であるロタキサンへの密な面性不斉の導入を試みる。先に示した、結晶化による面性不斉の高度な偏りを両末端に反応活性部位を有する軸分子共存下において行うことで、キラリティーを有する擬ロタキサン結晶を作成する。ここに、固相反応により末端を嵩高いストッパーで反応させることにより、ロタキサンを面性不斉の偏った状態で形成する予定である。また面性不斉を片方に偏らせたピラー[5]アレーン結晶を用いた、キラルゲスト分子の認識とキラル分割を試みる。ピラー[5]アレーン結晶はゲスト分子の取り込みと同時に結晶構造を変化させるので、結晶全体の安定性でキラルゲストのS体R体での取り込みやすさが異なると予想される。この系は一般的な1対1の相互作用と区別され、結晶の系全体で議論が可能な新たな認識方法であり、環状分子のキラル集合体の化学を発展させると期待している。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Dynamic‐to‐Static Planar Chirality Conversion in Pillar[5]arenes Regulated by Guest Solvents or Amplified by Crystallization2023

    • 著者名/発表者名
      Wada Keisuke、Suzuki Misaki、Kakuta Takahiro、Yamagishi Tada‐aki、Ohtani Shunsuke、Fa Shixin、Kato Kenichi、Akine Shigehisa、Ogoshi Tomoki
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie International Edition

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1002/anie.202217971

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Adaptive Planar Chirality of Pillar[5]arenes Invertible by n-Alkane Lengths2023

    • 著者名/発表者名
      Adachi Keisuke、Fa Shixin、Wada Keisuke、Kato Kenichi、Ohtani Shunsuke、Nagata Yuuya、Akine Shigehisa、Ogoshi Tomoki
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 145 ページ: 8114~8121

    • DOI

      10.1021/jacs.3c01019

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Discrete chiral organic nanotubes by stacking pillar[5]arenes using covalent linkages2022

    • 著者名/発表者名
      Shi Tan-Hao、Fa Shixin、Nagata Yuuya、Wada Keisuke、Ohtani Shunsuke、Kato Kenichi、Ogoshi Tomoki
    • 雑誌名

      Cell Reports Physical Science

      巻: 3 ページ: 101173~101173

    • DOI

      10.1016/j.xcrp.2022.101173

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Real-time chirality transfer monitoring from statistically random to discrete homochiral nanotubes2022

    • 著者名/発表者名
      Fa Shixin、Shi Tan-hao、Akama Suzu、Adachi Keisuke、Wada Keisuke、Tanaka Seigo、Oyama Naoki、Kato Kenichi、Ohtani Shunsuke、Nagata Yuuya、Akine Shigehisa、Ogoshi Tomoki
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41467-022-34827-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] CPL on/off control of an assembled system by water soluble macrocyclic chiral sources with planar chirality2022

    • 著者名/発表者名
      Fa Shixin、Tomita Takuya、Wada Keisuke、Yasuhara Kazuma、Ohtani Shunsuke、Kato Kenichi、Gon Masayuki、Tanaka Kazuo、Kakuta Takahiro、Yamagishi Tada-aki、Ogoshi Tomoki
    • 雑誌名

      Chemical Science

      巻: 13 ページ: 5846~5853

    • DOI

      10.1039/D2SC00952H

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 蒸気によりターンオン型のりん光応答を示すピラー[5]アレーン-液体チエニルジケトン包接結晶2023

    • 著者名/発表者名
      和田圭介, 大島祐也, 大谷俊介, 加藤研一, 谷洋介, 立川貴士, 生越友樹
    • 学会等名
      日本化学会第103回春季年会
  • [学会発表] ピラー[5]アレーン骨格を有するドナー・アクセプター型共役系分子のゲスト光学応答2022

    • 著者名/発表者名
      和田圭介, 加藤研一, 大谷 俊介, 生越 友樹
    • 学会等名
      第19回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム
  • [学会発表] りん光性液体とピラー[5]アレーンによる包接結晶形成および蒸気に応答した発光特性2022

    • 著者名/発表者名
      和田圭介, 大島祐也, 大谷俊介, 加藤研一, 谷洋介, 立川貴士, 生越友樹
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] ピラー[5]アレーン骨格をドナー性部位とするドナー・アクセプター型共役系分子の発光特性2022

    • 著者名/発表者名
      和田圭介, 加藤研一, 大谷 俊介, 生越 友樹
    • 学会等名
      第56回有機反応若手の会

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公開日: 2023-12-25  

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