研究課題
昨年発表した論文では、マウスの大規模空間学習における空間学習の特徴の違いを取り上げた。本年度ではさらに空間学習の詳細を明らかにするために強化学習の手法の一つであるSR学習エージェントを用いたシミュレーションを活用した。シミュレーションの結果、小規模と大規模の空間学習におけるマウスの空間学習能力の差異は、脳内の空間解像度と関連していることが示唆された。また、空間解像度は環境の大きさに固有で最適な値が存在することも示された。これは、海馬の場所細胞が背腹軸に沿って、または空間の大きさに応じて受容野の大きさが異なるという既存の知見の理由づけとなる可能性が示された。本研究のシミュレーションは、現在の実験室環境では難しい超大規模環境における動物の空間学習の振る舞いを再現し、研究するための可能性を示した。これにより、従来の研究方法では難しかった大規模な環境での学習戦略の検証が可能となると考えられる。また、実際の動物で超大規模環境の空間学習の振る舞いを観察する手段としてバーチャルリアリティが挙げられている。バーチャルリアリティでは実験室環境の大きさに制限されない自由な空間スケールが構築できる。今後の展望としては、シミュレーションとバーチャルリアリティによる、モデリングと実際の動物の両方向のアプローチにより、超大規模環境における空間学習を詳細に解析することが考えられる。これにより、生物の空間学習をより深く理解し、新たな知見を得る可能性が期待されている。
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eNeuro
巻: 11 May 2023, 10 ページ: 0
10.1523/ENEURO.0505-22.2023