音源の物理的発生メカニズムの違いが音源の移動に伴う放射音の指向性(音の放射方向と音のエネルギーの強さの関係)の変化に及ぼす影響について,模型発射実験による実験的検討を行った.振動体からの放射音における音源として超音波素子と,空力音源としてエオルス音を発生させる円柱状のパーツを模型に搭載し,低騒音模型発射装置にて時速約100 km~300 kmにて模型を発射させて模型からの放射音を測定した.この測定結果を用いて音源の移動が放射音特性に及ぼす影響について検証した.その結果,移動音源からの放射音に対して音源移動に伴う振幅変調について,音源移動に伴う周波数変調(ドップラー効果)の割合が同じ程度発生する場合,振動体の音源よりも空力音源の方が振幅変調の程度が大きいことを実験的に示した.これにより,都市や地域における交通騒音予測のうち,空力音の寄与が大きい高速鉄道からの騒音予測において,音源移動に伴う振幅変調の考慮の有無によって騒音レベルの予測結果の差が無視できないほど大きいことが示唆される. また,音響風洞内に空力音源を置いた場合の空力音の指向性について測定し,移流による空力音源からの放射音の変化について検証して音源移動に伴う空力音源の振幅変調と比較した.その結果,空力音の音源移動に伴う振幅変調について,ドップラー効果もしくは移流に伴う見かけの波長の変化の割合が同じ程度発生する場合,移流に伴う振幅変調と比較してより程度の大きな振幅変調が発生することを実験的に示した.これにより,移動速度の乗り物から発生する空力音について,音源が移動する場合に実際に放射される空力音の音圧レベルは,風洞実験にて測定される音圧レベルより大きくなることが示唆される.
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