本研究は、時空間ダイナミクスを示す自然現象が従う数理モデルをデータドリブンに推定することである。2022年度はリズム現象を示す観測データから背後にある結合位相振動子モデルの推定手法について研究を進めた。具体的にはガウス過程回帰を用いた推定手法とNeural SDEを用いた手法について考察を進めた。ガウス過程回帰については結合位相振動子モデルの結合関数の推定について一定の成果が得られたため、現在論文を執筆中である。またNeural SDEを用いた推定手法について、結合位相振動子モデルから得られたデータをもとに結合関数を推定する手法については一定の成果が得られている。今後リズム現象を示す実データについてNeural SDEを用いて結合関数を推定することができるかを検討する予定である。 また、共同研究において、臨界現象を示す系の有限サイズのデータから臨界指数を推定する研究を進めた。臨界現象は自然界に普遍的に見られるもので、特に結合位相振動子モデルにおいても振動子間の結合強度を変化させることで非同期状態から同期状態への転移現象が見られることが知られている。ニューラルネットワークを用いることで臨界指数を高精度で推定することに成功したため、これを論文としてまとめた。 一方で、時空間ダイナミクスを示す自然現象から背後に潜む数理モデルを推定する手法の開発についてはあまり進捗が得られなかったため、今後の課題として残っている。
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