本年度では、A群レンサ球菌感染による自然免疫伝達因子STINGの局在変化がA群レンサ球菌が産生するサイクリックジヌクレオチド依存的であるのかを検証した。A群レンサ球菌はATPからc-di-AMPを合成するDacA、c-di-AMPをlinearized-di-AMPにするPdpP、linearized-di-AMPをAMPにするPde2を保有する。DacAあるいはPdpP欠損したA群レンサ球菌を作製し、STING-FLAG安定発現細胞に感染させるてSTINGの局在変化を評価した。その結果、DacA欠損株を感染させた細胞ではSTINGの局在変化が顕著に低下した。一方で、PdpP欠損株を感染させた細胞は野生株を感染させた細胞と比較して、STINGが感染初期で局在変化した。A群レンサ球菌の感染によるSTINGの局在変化はc-di-AMP依存的であることが示唆された。 前年度に、STING欠損細胞では膜の修復機構およびエンドソーム/リソソーム分解経路の活性化が示唆されており、損傷膜の修復とエンドソーム/リソソーム分解経路の選別に関与するESCRTタンパク質との相互作用を共免疫沈降法により明らかにした。ESCRT複合体の活性化はエンドソーム/リソソーム分解経路を亢進することが報告されおり、本年度はSTINGと相互作用するESCRTタンパク質の強発現系を用いてESCRTタンパク質の活性化を模倣して、STING欠損細胞における損傷膜の修復あるいはエンドソーム/リソソーム分解経路を亢進する因子の同定を試みた結果、ESCRT-I複合体の構成因子が関与していた。同定したESCRT-I複合体構成因子の強発現細胞では、STING欠損細胞と同様にEGFRの分解が亢進していた。STINGがESCRT-I複合体を介してエンドソーム/リソソーム分解経路を制御することが示唆された。
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