研究実績の概要 |
本年度は研究目的達成の予備検討として、高分子の一次構造の多元制御の検討を行った。すなわち、可逆的不活性化ラジカル重合と岡本らにより開発された希土類ルイス酸触媒を用いたアクリルアミドの立体規則的ラジカル重合の条件をハイブリッド化することで、分子量及び立体規則性の同時制御について検討を行った。有機テルル化合物を用いる重合TERPにおいては、希土類ルイス酸と高い共存性を有し、分子量と立体規則性の同時制御が高度に行えた。特に、それまで困難であった高い立体規則性をもつ高分子量体の合成にも成功した。N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)の重合においては、メソ2連子選択性が85%、分子量が約11万の高分子量PDEAAが得られた。また、高い重合末端の活性を生かしたステレオブロック共重合体の合成にも成功した。さらに、光照射のON/OFFの切り替えによる反応の時間制御を加味した三元同時制御も行えた。その他、本反応系を用いて作成した高分子を用いて、気相中における高分子の立体規則性とイオン移動度の相関関係を初めて明らかにした。ジチオエステル連鎖移動剤を用いたDEAAのRAFT重合では、休止種の分解により分子量制御の低下が観測された。また、その分解機構を初めて明らかにした。さらに、この分解反応が希土類ルイス酸によって阻害されることを明らかにした。そこで、このRAFT重合の条件を、岡本らの立体規則的重合とハイブリッドしたところ、高い立体規則性を持つ、分子量が約17万に達する高分子量体の合成に初めて成功した。また、分岐誘起モノマーであるビニルテルリド存在下におけるTERPによる多分岐ポリアクリルアミドの重合系に、希土類ルイス酸を添加することによって、分子量、分岐構造、および立体規則性の三元制御についても可能であることを明らかにした。
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