研究課題/領域番号 |
22J20214
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西尾 麻里沙 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | healthy ageing / 妥当性検証 / 高齢者の健康 |
研究実績の概要 |
高齢者は複数の疾病や障害を抱えることが多く、それらを完全に取り除くことは困難である。そのため、世界保健機関(WHO)は、疾病や障害がない状態を目指すのではなく、高齢者の「内在的能力」と「機能的能力」を維持・養成する「支援的な環境」を整備することでwell-beingを目指す、Healthy ageingの概念を提唱した。UN decade of healthy ageingイニシアチブは、Healthy ageingのモニタリング指標として、「内在的能力」・「機能的能力」・「支援的な環境」を測定することを各国に推奨している。しかし、「内在的能力」や「機能的能力」の概念の妥当性や、具体的にどのような「支援的な環境」が必要か、また「支援的な環境」の整備によってどの程度healthy ageingを達成できるかは明らかにされていない。そのため本研究では、日本老年学的研究機構(JAGES)の大規模データを用いて、healthty ageingの概念の妥当性を検討する。今年度は、「機能的能力」の概念の交差妥当性・因子妥当性・予測妥当性を検証し、その成果をWHO Clinical Consortium on Healthy Ageing 2022にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、WHO高齢者部門の研究者との協働により、「機能的能力」の因子妥当性と予測妥当性を検討した。分析には、日本老年学的評価研究(JAGES)が2013年、2016年、2019年に収集した、日本人高齢者約20万人分の大規模パネルデータを用いた。まず、国内外の複数の専門家からのアドバイスを元に、31の「機能的能力」測定項目候補を2016年データから選定した。続いて、これらの31項目を用いて探索的因子分析と確証的因子分析を実施し、24から成る「機能的能力」の測定項目を選定した。因子妥当性を検討するために、24から成る「機能的能力」がいくつの因子に分類されるか分析した。その結果、我々の測定する「機能的能力」は3因子に分類されることが明らかになった。同様の結果が得られるかどうかを2013年データでも検討し、「機能的能力」の測定項目に交差妥当性があることを確認した。更に、「機能的能力」の予測妥当性を検討するために、2016年の「機能的能力」と2019年のwell-beingの関連を検討した。その結果、「機能的能力」は3年後のwell-beingを量-反応関係的に予測することが示唆された。これらの結果は、WHO Clinical Consortium on Healthy Ageing 2022にて発表した。また国際誌への投稿も準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も引き続き、healthy ageingの概念の更なる妥当性検証を進めていく。具体的には、「機能的能力」のハードアウトカム(要介護や死亡)の予測妥当性検討や、「内在的能力」と「支援的な環境」の「機能的能力」の予測妥当性検討を実施する予定である。
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