研究課題/領域番号 |
22J20670
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古村 翔也 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | コムギ / ゲノム編集 / 花成 |
研究実績の概要 |
2022年度はゲノム編集により、開花時期に関する3つの遺伝子をノックアウトした系統を得ることを目的にした。標的遺伝子について、同祖遺伝子を全て含め特異的に認識する gRNA を WheatCripsr (Cram et al. 2019) を用いて1遺伝子につき2つ作製し、Hahn et al. (2019) の tRNA-gRNA 同時発現系により、計6つの gRNA を同時に発現するゲノム編集用ベクターを構築した。ゲノム編集の可否を判断するため、作製したベクターをアグロバクテリウム法により四倍体コムギ品種 "Kronos" へ導入し、その選抜カルスから DNA を抽出した結果、標的遺伝子の1つである PHYTOCLOCK1(PCL1) でゲノム編集が確認された。そして、カルスから計 61 の再分化個体( T0 植物)を得た。しかしながら、標的遺伝子がゲノム編集された再分化個体は検出されなかった。そこで、Cas9 遺伝子を Hahn et al. (2019) による切断効率のより高い Cas9 遺伝子へと変更した。加えて、複数の gRNA 設計サイトを併用して1遺伝子につき6つの gRNA を設計した。また、Abe et al. (2019) による Qsd1 の gRNA を用いることで、四倍体コムギにおいて tRNA-gRNA システムにより複数の gRNA を同時に発現できることを確認した。変更後 Cas9 遺伝子ならびに再設計した6つの gRNA を導入した "Kronos" の選抜カルスでは、実施当初に比較して高頻度で目的遺伝子のゲノム編集が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、対象遺伝子のノックアウト系統を作出することが基盤となっている。しかし、2022年度では、ゲノム編集ベクターを導入した 61個体のT0個体を作出するも、対象遺伝子のゲノム編集系統は得られなかった。加えて、Krasileva et al. (2017) による "Kronos" EMS変異体集団から、対象遺伝子のノックアウト系統を探索し、その分譲を受けたが、該当変異部位がヘテロから野生型ホモに固定されていた個体が多く、機能喪失型アレルの集積は達成されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に引き続き、ゲノム編集による対象遺伝子のノックアウト系統の作出を目的とする。2022年度に実施した gRNAの設計方法の変更、1遺伝子あたりの設計するgRNA数の増加、Cas9遺伝子の変更により、研究開始当初と比較して選抜カルスにおける高頻度のゲノム編集を確認している。そのため、形質転換当代でのゲノム編集個体の作出が期待される。ゲノム編集個体が得られた場合、自殖や交配、複数遺伝子の同時改変ベクターの使用を通して、対象遺伝子群の遺伝子型を拡張する。仮に、T0世代でゲノム編集イベントが検出されなかった場合でも、その自殖後代ではゲノム編集がなされうることが報告されている(Zhang et al. 2021)。そのため、作出した形質転換体の自殖後代でのゲノム編集個体のスクリーニングを計画する。ノックアウト系統の獲得が達成された場合、室内もしくは野外での表現型の調査へ移行する。
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