研究実績の概要 |
本年度は、これまでの実施状況を鑑み、ノックアウトの対象遺伝子をPCL1, BBX19, PIF4 の3遺伝子からPCL1, BBX19 の2遺伝子へと変更した。また、これまで四倍体コムギ品種'Krono'のみを材料としていたが、形質転換効率の上昇から六倍体コムギ品種‘Fielder’を材料へ加えた。今年度は、上記の2品種でPCL1-BBX19 の二重ヌル変異体を作製し、機能的な同祖遺伝子数(遺伝子量)の異なる変異体シリーズの取得を目的とした。 前年度61個体の形質転換体を得るも、目的遺伝子のゲノム編集個体は得られなかった。そこで、ゲノム編集効率の上昇を目的にgRNAの再デザインと標的あたりのgRNA数の増加、Cas9タンパク質の変更を行なった。コンストラクトの改良後、PCL1とBBX19を同時に標的とするベクターをアグロバクテリウム法により導入した。その結果、Kronosでは14個体、Fielder では1個体のT0世代が得られた。PCRバンド長の変化ならびにサンガーシーケンスによる配列確認の結果、KronosとFielder の両方で全ての遺伝子が改変されたPCL1-BBX19 の二重ヌル変異体を1個体ずつ取得した。二重ヌル変異体はそれぞれ野生型と交配し、F1世代にてT-DNAを含まないヌルセグレガントを選抜した。その後、F2:3世代にて遺伝子量の異なる16パターンの変異体シリーズを選抜した。得られた変異体シリーズは現在、京都大学植物遺伝学研究室のP1P栽培室ならびに京都大学農学研究科附属農場の特定網室にて栽培している。最終年度は、栽培中の変異体シリーズの表現型を調査する。表現型の差異が見られた場合、リアルタイムPCRを用いた発現解析を実施し、出穂制御や概日リズムにおける各遺伝子の役割および対象遺伝子間の相互作用を推定する予定である。
|