研究実績の概要 |
本研究目的は、申請者らのグループが発見したNb/V/Ta人工格子が示す超伝導ダイオード効果の機構解明である。申請者は、超伝導ダイオード効果は薄膜積層方向の空間反転対称性の破れに起因する効果であると考えているが、超伝導人工格子に侵入するボルテックスの運動に起因する可能性も指摘されている。令和4年度は、Nb/V/Ta人工格子の超伝導ダイオード効果の極性が磁場を増大させることで反転することを実証した。(Ryo Kawarazaki et al., Magnetic-field-induced polarity oscillation of superconducting diode effect, Appl. Phys. Express 15, 113001)この結果は、超伝導状態の性質もしくは超伝導ダイオード効果の機構のいずれかが低磁場側と高磁場側で変化していることを意味する。超伝導状態の変化として、ヘリカル超伝導状態間の クロスオーバーが提唱されており、それに基づいた理論計算と定性的に整合していることが判明した。その一方で、低磁場と高磁場では超伝導ダイオードの機構が異なり、特に高磁場側では超伝導人工格子に侵入するボルテックスに起因している可能性を示唆する結果も得られた。本研究成果から超伝導ダイオード効果の機構解明には低磁場側と高磁場側でそれぞれ個別に検討する必要性があることが判明した。
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