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2022 年度 実績報告書

ケトン体受容体を介した食・栄養環境認識機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J22100
配分区分補助金
研究機関京都大学

研究代表者

西田 朱里  京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2025-03-31
キーワードケトン体 / GPR109A / 低炭水化物高脂肪食(ケトン食)
研究実績の概要

ケトン体は飢餓時にエネルギー源として働くだけでなく、シグナル伝達物質として、細胞膜受容体を介した代謝調節に寄与する。本研究では、ケトン体-GPCRsシグナルに着目し、ケトン体による代謝改善効果の分子機序を明らかにするため、遺伝子改変マウスを用いた検討を行った。初めに、ケトン体のうちβヒドロキシ酪酸をリガンドとするGPR109Aについて発現解析を行った結果、白色・褐色の脂肪組織に加えて、下垂体や副腎での高発現が認められたことから、GPR109Aが脂肪分解の調節に関与することに加え、代謝関連ホルモンの分泌制御に寄与する可能性が示唆されている。そこでケトン体を介した代謝調節機構の一端を明らかにするべく、野生型マウスとGpr109a遺伝子欠損マウスへのケトン食負荷試験を行った。その結果βヒドロキシ酪酸がGPR109Aを介して、過度な脂肪分解の抑制、それに伴う脂肪肝の抑制に寄与する可能性が示唆された。
加えて、食事誘導性のケトジェニック環境であるケトン食負荷試験だけでなく、生理的にケトン体産生が促される条件に着目することで、ケトン体受容体の生理的意義を検討することとした。なかでもマウスの乳児期における血中ケトン体濃度を測定したところ、ケトン体受容体を活性化するのに十分なケトン体の存在が確認され、当該時期においてケトン体受容体が重要な役割を果たす可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は研究計画に基づき、Gpr109a遺伝子改変マウスに対するケトン食負荷試験を行い、脂肪組織・肝臓を介した脂質パラメータの変動、褐色脂肪組織を介した体温変動を評価した。その結果、GPR109Aがケトジェニック環境下において過剰な脂肪分解を抑制する可能性が示唆されている。また当初の研究計画に加えて、ケトン体が生理的なリガンドとなり得る条件を独自に検討し、乳児期の血中ケトン体濃度がGPCRを十分に活性化することを見出したことに加え、新たにケトジェニック環境の検討として、絶食試験・STZ誘導Ⅰ型糖尿病モデル・ケトン体前駆体負荷試験・中鎖脂肪酸食負荷試験の実施を行い、次年度の研究活動に向けた条件検討を実施した。
加えて今年度は、新たなGPCRのリガンドスクリーニング系を導入したほか、自身の研究を進めていく過程で習得した腸管の解析技術を駆使することで、脂肪酸やその代謝物がGPCRを介して宿主に及ぼす影響を検討し、共著者として3報の学術論文を発表した。これらの研究成果は、生理的な状態において、脂肪酸がGPCRを介して代謝調節を行う新たな作用機序を見出したものであることから、エネルギー代謝制御におけるケトン体の作用機序解明を目的とした本研究課題に関連付けることができる。
以上より申請当初予定していた進捗予想と比較し、本年度の研究はおおむね順調に進行していると考える。

今後の研究の推進方策

ケトン体受容体であるGPR109Aについて、ナイアシン-GPR109Aシグナルによる薬理作用は既知なものの、ケトン体をリガンドとする代謝調節機構については未解明である。今年度は、食事誘導性のケトジェニック環境下、GPR109Aが過剰な脂肪分解を抑制する可能性が示唆されたため、次年度も本表現型について詳細な検討を行う。具体的には、Gpr109a遺伝子欠損により確認された表現型の責任臓器を特定することを目的とし、脂肪組織・下垂体・副腎などの遺伝子発現解析に加え、アディポカインを含む各種ホルモン測定を行う。さらに同じくケトン体受容体であるGpr41が Gpr109aを介した表現型へ関与する可能性を考え、Gpr41遺伝子欠損マウスおよびGpr109a/Gpr41二重遺伝子欠損マウスへのケトン食負荷試験を進め、一遺伝子に留まらないケトン体の作用機序解明を目指す。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Intestinal GPR119 activation by microbiota-derived metabolites impacts feeding behavior and energy metabolism2023

    • 著者名/発表者名
      Igarashi Miki、Hayakawa Tetsuhiko、Tanabe Haruka、Watanabe Keita、Nishida Akari、Kimura Ikuo
    • 雑誌名

      Molecular Metabolism

      巻: 67 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.molmet.2022.101649

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Medium-chain fatty acids suppress lipotoxicity-induced hepatic fibrosis via the immunomodulating receptor GPR842023

    • 著者名/発表者名
      Ohue-Kitano Ryuji、Nonaka Hazuki、Nishida Akari、Masujima Yuki、Takahashi Daisuke、Ikeda Takako、Uwamizu Akiharu、Tanaka Miyako、Kohjima Motoyuki、Igarashi Miki、Katoh Hironori、Tanaka Tomohiro、Inoue Asuka、Suganami Takayoshi、Hase Koji、Ogawa Yoshihiro、Aoki Junken、Kimura Ikuo
    • 雑誌名

      JCI Insight

      巻: 8 ページ: -

    • DOI

      10.1172/jci.insight.165469

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Host metabolic benefits of prebiotic exopolysaccharides produced by <i>Leuconostoc mesenteroides</i>2023

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto Junki、Shimizu Hidenori、Hisa Keiko、Matsuzaki Chiaki、Inuki Shinsuke、Ando Yuna、Nishida Akari、Izumi Ayano、Yamano Mayu、Ushiroda Chihiro、Irie Junichiro、Katayama Takane、Ohno Hiroaki、Itoh Hiroshi、Yamamoto Kenji、Kimura Ikuo
    • 雑誌名

      Gut Microbes

      巻: 15 ページ: -

    • DOI

      10.1080/19490976.2022.2161271

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Involvement of Gut Microbial Metabolites Derived from Diet on Host Energy Homeostasis2022

    • 著者名/発表者名
      Nishida Akari、Ando Yuna、Kimura Ikuo、Miyamoto Junki
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 23 ページ: -

    • DOI

      10.3390/ijms23105562

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Short-chain fatty acid receptors and gut microbiota as therapeutic targets in metabolic, immune, and neurological diseases2022

    • 著者名/発表者名
      Ikeda Takako、Nishida Akari、Yamano Mayu、Kimura Ikuo
    • 雑誌名

      Pharmacology & Therapeutics

      巻: 239 ページ: -

    • DOI

      10.1016/j.pharmthera.2022.108273

    • 査読あり
  • [学会発表] Gut microbial short-chain fatty acids-mediated olfactory receptor 78 stimulation promotes anorexigenic gut hormone peptide YY secretion in mice.2022

    • 著者名/発表者名
      Nishida Akari, Miyamoto Junki, Shimizu Hidenori, Kimura Ikuo
    • 学会等名
      22nd IUNS-ICN International Congress of Nutrition in Tokyo
  • [学会発表] ケトジェニック環境下におけるGPR109Aの機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      西田朱里、池田貴子、北野(大植)隆司、木村郁夫
    • 学会等名
      第40回内分泌代謝学サマーセミナー
  • [学会発表] 新規短鎖脂肪酸受容体Olfr78を介した代謝調節機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      西田朱里、宮本潤基、井貫晋輔、清水秀憲、大野浩、木村郁夫
    • 学会等名
      第21回ファーマ・バイオフォーラム
  • [図書] 実験医学(増刊号)2022

    • 著者名/発表者名
      池田貴子、西田朱里、山野真由、木村郁夫
    • 総ページ数
      236
    • 出版者
      羊土社
  • [図書] The Lipid2022

    • 著者名/発表者名
      西田朱里、泉綾乃、池田貴子、木村郁夫
    • 総ページ数
      98
    • 出版者
      メディカルレビュー社

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公開日: 2023-12-25  

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