研究課題/領域番号 |
22KJ1973
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 朱里 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | GPR109A / ケトン体 / βヒドロキシ酪酸 / GPCR / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
ケトン体は飢餓時にエネルギー源として働くだけでなく、シグナル伝達物質として、細胞膜上受容体(GPCRs)を介した代謝調節に寄与する。本研究では、ケトン体-GPCRsシグナルに着目し、ケトン体による代謝改善効果の分子機序を明らかにするため、遺伝子改変マウスを用いた検討を行った。 今年度はケトン体のうちβヒドロキシ酪酸をリガンドとするGPR109Aに着目し、受容体の発現解析とケトン食負荷試験を実施した。加えて今年度は、STZⅠ型糖尿病モデルを用いた検討を行い、GPR109Aが脂肪酸利用を制御することが示唆された。そこで受容体の即時的な応答を確認するために、βヒドロキシ酪酸の単回投与試験を行った。その結果、野生型マウスで確認された血中脂質量の変動が、Gpr109a遺伝子欠損マウスでは消失し、上記負荷試験の分子機序となる表現型が得られた。 これらの結果から、GPR109Aはケトジェニック環境下、脂肪酸利用を制御することでエネルギー代謝の恒常性維持に寄与することが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究計画に基づき、Gpr109a遺伝子欠損マウスおよび、Gpr109a/GPR41二重遺伝子欠損マウスへのケトン食負荷を行った。その結果、二重遺伝子欠損マウスで確認された脂質代謝異常が、GPR109Aに寄与する可能性が示唆されたため、GPR109Aについての詳細な検討を行う方針とした。具体的にはSTZⅠ型糖尿病モデルやβヒドロキシ酪酸の単回投与を行い、現在までにGPR109Aが脂肪酸利用を制御する可能性を見出している。当該年度において遺伝子欠損マウスを用いた生体機能解析が進み、論文に纏める方針も立てられたことから、本年度の研究はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、食事誘導性ケトジェニック環境および糖尿病モデルにおいて、ケトン体がGPR109Aを介して脂肪酸利用を制御する可能性が示唆されている。そこで次年度は、新たな食事誘導性ケトジェニック環境として、ケトン体を効率的に産生する中鎖脂肪酸食を負荷し、GPR109Aの表現型について検証を行う。またSTZⅠ型糖尿病モデルでの詳細な検討として、代謝ケージを用いた呼吸商の測定を行い、糖尿病発症時のエネルギー利用と受容体の関係について解明していく。
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