研究課題/領域番号 |
22KJ1978
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関 凜 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | C-O結合 / ロジウム / ルイス酸性金属 / 協働触媒 |
研究実績の概要 |
令和5年度は,研究計画書に記載した「C(sp2)-O結合活性化・触媒的官能基化反応の開発」,および「C(sp3)-O結合活性化・触媒的官能基化反応の開発」に引き続き取り組んだ。 まず,C(sp2)-O結合活性化・触媒的官能基化反応の開発に関しては,Rh/La協働触媒によるフェノール誘導体のC(sp2)-O結合切断を伴う還元的ケイ素化について反応機構を様々な方法(等量反応,CV,XAS,UV-Vis, ESR, 理論化学計算等)を用いて詳細に検討した。またこの内容を論文に纏め,プレプリントサーバーへの投稿を行った。その過程で,同様の反応系でのC(sp2)-O結合のマグネシウム化反応を見出した。 また,C(sp3)-O結合活性化・触媒的官能基化反応の開発に関して,Rh/In協働触媒によるジアルキルエーテルのC(sp3)-O結合切断を伴う還元的ケイ素化について反応条件の最適化を行った。さらに,基質によって適切な反応条件を設定することで,基質適用範囲を拡大し,立体障害に依存する特徴的な化学選択性が発現することを見出した。また,東京都立大との共同研究を通して,本反応の反応機構について調査した結果,本反応が2種の金属が原子レベルで混合したナノ粒子が触媒活性種であることを明らかにした。このような種が有機合成反応における触媒として作用する例は極めて稀であり,重要な研究成果である。さらにその過程で,遷移金属触媒を用いないアリル炭酸エステルのマグネシウム化反応を見出した。 現在,上述のすべての分子変換に関し,論文投稿を目指している。さらに,同様の触媒系を用いて,より有機合成的に価値のある分子変換(主にC-O結合活性化を経由するC-C結合形成反応)を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載した「C(sp2)-O結合活性化・触媒的官能基化反応の開発」に関してはRh/La協働触媒によるC(sp2)-O結合還元的シリル化反応が,「C(sp3)-O結合活性化・触媒的官能基化反応の開発」に関してはRh/In協働触媒によるC(sp3)-O結合還元的シリル化反応が,それぞれ論文発表に向けた最終段階である。また,当初想定していなかった分子変換であるC-O結合切断を経由するマグネシウム化反応が見つかった。半年にわたる海外研修により,実験的には本研究課題に取り組む時間は半年間であったが,海外研修中も計算化学等で研究の進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは,Rh/La協働触媒によるフェノール誘導体のC(sp2)-O結合切断を伴う還元的ケイ素化,Rh/In協働触媒によるジアルキルエーテルのC(sp3)-O結合切断を伴う還元的ケイ素化の両課題に関して雑誌論文への投稿を目指す。さらに,検討の過程で見出した,ロジウム触媒を用いたC(sp2)-O結合のマグネシウム化反応,遷移金属触媒を用いないアリル炭酸エステルのマグネシウム化反応の両反応について,反応系の最適化,基質適用範囲の検討を行い,論文として纏める。また,同様の触媒系を用いて,より有機合成的に価値のある分子変換を模索するため,研究計画書には記載していないが,計算科学によるシミュレーションを活用した異種金属触媒系の創出を目指す。すでに,北海道大学前田研究室への国内留学を経て反応経路自動探索法(AFIR法)を習得し,これを用いて,異種複核金属触媒による不活性結合活性化のコンピューターシミュレーションによる検討を開始している。現在いくつかの高難度分子変換をモデルとして設定し,様々な組み合わせのマルチメタル種の反応性・活性化エネルギーを見積もっている。さらに計算科学によるシミュレーションで得られた最適触媒に関し,実際に合成の初期検討を行う。
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