研究課題/領域番号 |
22J22463
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮崎 うらら 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 古細菌 / 深海底熱水活動域 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞表層を覆うSレイヤーと呼ばれる独自の糖タンパク質による、超好熱深海古細菌の極限環境適応機構を分子レベルで理解し、応用可能性を評価することである。初年度である本年は、対象となる独自の微生物株の大量培養システムの構築および生理生化学的性状の解明を行なった。 本研究で対象とする超好熱深海古細菌は、培養難度の高さと細胞密度の低さが特徴である。構造解析に必要となる膨大な細胞量を比較的短期間で確保するため、独自の大型培養装置を開発する必要があった。研究計画では培養液の攪拌と気相の通気による高効率な細胞培養装置の開発を予定していたが、本培養では可燃性の水素ガスを気相とすることから配管の安全性に懸念が生じ、当初の設計の大幅な見直しを余儀なくされた。最終的に、大型インキュベーターと耐圧ガラス瓶を使用した、気相や培養液の漏洩リスクの低い新規培養システムを開発し、これを用いた培養に成功した。 また、本研究で対象とする古細菌は申請者が独自に分離したものであり、遺伝的新規性の高い新種であることが示唆されている。本株およびその近縁株の生理生化学的な性状は、細胞表層構造解析における基盤的知見となるものであり、その解明が急務であった。本年度は、基本的な至適増殖条件および、呼吸基質や有機物の利用能を調査した。しかし、対象微生物の培養の不安定性ゆえ、これらの結果の再現性が低く、繰り返しの実験が必要であった。これまでに行なった複数回の実験結果から、信頼性の高い生理生化学的性状が明らかになりつつある。次年度は引き続き、これらの性状解析を優先して進め、構造解析の結果を解釈する上で必須の知見を得る予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、構造解析に必要となる大量の細胞を得るための大型培養システムの構築に取り組んだ。安全上の懸念から、当初計画していた設計を大幅に変更することとなり、設計と機材等の手配に時間を要した。また、対象微生物の生理生化学的な性状は、細胞表層構造解析における基盤的知見であり、表層構造解析に先立った解明が必要である。大量培養装置の開発と並行して性状解析を進めていたが、対象微生物の培養難度の高さゆえ実験の再現性が低く、繰り返しの実験を行う必要が生じたため、当初の計画通りに研究を進めることが困難になった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は大量培養システムの設計の大幅な見直しを余儀なくされたが、最終的に高効率かつ安全性の高い新規培養システムの構築に成功し、大量培養を開始している。次年度も培養を継続し、細胞表層構造解析に十分な細胞量を確保する。対象微生物の生理生化学的な性状については、複数回の実験により、妥当と思われる性状が明らかになりつつある。次年度も引き続き解析を進め、構造解析の結果を解釈する上で必須となる対象微生物の性状をまとめる。さらに、これらの結果を踏まえて、Sレイヤータンパク質構造およびSレイヤー糖鎖の解析を進め、対象微生物の細胞表層構造の包括的な理解を目指す。
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