研究課題/領域番号 |
22J22795
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
特別研究員 |
植松 亮祐 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 超巨大ブラックホール / サブミリ波銀河 |
研究実績の概要 |
銀河とその中心に存在する超巨大ブラックホール (SMBH) の共進化は天文学における重要なテーマである。本研究では共進化機構を解明する鍵として、サブミリ波銀河中の活動銀河核 (AGN) に着目した。サブミリ波銀河とは、サブミリ波帯で明るい銀河の総称であり、遠方で星形成が激しいという特徴を持つ。また、AGNとは、SMBHへの激しい質量降着により、銀河中心が明るく輝く現象である。近年の理論研究によると、銀河合体などにより母銀河の星形成が誘起され、その後AGNが発現する可能性が指摘されている。この過程において、サブミリ波銀河中のAGNは、AGNが発現する段階に相当する。従って、サブミリ波銀河中のAGNを詳細に分析することで、AGNの発現機構や、 共進化機構の解明につながると期待される。
本期間は、ALMA広視野サーベイ (ALMA Lensing Cluster Survey) で観測されたサブミリ波銀河について、銀河とAGNの性質を調査した。まず、当該領域のX線観測データを用いることで、X線で明るいAGNを3天体同定した。多波長スペクトルエネルギー分布 (SED) 解析から、これらはSMBHと母銀河の成長が共に激しい種族であることが確認された。次に、多波長SED解析を用いて、X線で検出されていないAGNを6天体同定することに成功した。これらは、視線上の吸収が激しいため、X線で検出されなかったものと考えられる。これらの天体から導かれるAGN光度密度は、従来の軟X線サーベイによる推定よりも有意に大きい。この事実は、遠方星形成銀河中のダストに隠されたAGNが、遠方宇宙における共進化に重要な役割を果たしたことを示唆している。研究結果は、査読論文として出版された (Uematsu et al. 2023, 2024 ApJ)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度から繰り越した課題を完了させた。その内容は、査読論文として出版済みである (Uematsu et al. 2023, 2024 ApJ)。また、10件に及ぶ、国内外の研究会にて成果を報告し、共同研究の創発等に繋がった。これらの実績を元に、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、サブミリ波銀河中には、ダストに隠された (検出されない) AGNが多数存在することが示唆された。この発見は、遠方AGNの定量評価に大きな影響を与えるものである。しかし、同手法により同定されたAGNは未だ数が少なく、統計的な研究を行うためにはサンプルを拡大する必要がある。そこで、COSMOSやGOODSといった有名領域において、同様の研究を行う方針を立てた。COSMOSやGOODSは多波長データが特に豊富な領域であり、信頼性の高い多波長SED解析が行える点も優れた点である。これらの領域における統計的研究により、ダストに隠されたAGNが発現する条件や、その多様性を探りたい。
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