研究課題/領域番号 |
22J22920
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 勇樹 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | ハイエントロピー合金 / ミディアムエントロピー合金 / エマルジョン / 電析 / めっき |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的はハイエントロピー合金(HEA)めっき手法の確立と高硬度・高耐食性HEAめっきの作製である.当該年度では,既に成功していたCoNiCuミディアムエントロピー合金(MEA)めっきをモデルとして水相と油相にそれぞれ適切な添加剤を加えることでエマルジョンを用いた合金めっきのメカニズムについて詳しく調べた.油相への添加剤としてwater-in-oil型エマルジョンの作製によく用いられる界面活性剤であるAerosol OTを選択した.これを加えることで得られためっき膜の合金組成が等原子比率に近づき,表面が平滑化することがわかった.これは添加した界面活性剤分子が油水界面に集合することで液滴と電極の接触角が変わり,合金電析の主な反応場が水-電極の二相界面から水-電極-油の三相界面へと変化し,それにより反応速度が上がったことが原因であると考えている.水相に添加剤として増粘剤であるglycerolを加えた場合には,めっき膜の合金組成と液滴中の金属イオン濃度比率がほぼ等しくなり,さらに平滑化することがわかった.これは液滴中の水相の粘性が上がることですべての金属の析出反応が拡散限界となり合金組成が溶液中の金属イオン濃度比率に近づき,拡散限界電流密度が減少することで結晶粒サイズが小さくなり平滑化したと考えている.以上の結果からエマルジョン電析では微小な液滴内に拡散層を閉じ込めることで合金組成の制御とめっき膜の平滑化が両立できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究により,添加剤によってエマルジョン中の液滴と電極の接触角や液滴内の粘性を変化させ,それらがめっき膜の組成や結晶粒サイズに与える影響を詳しく調べることで,液滴内の各金属イオンの還元反応が拡散限界となっていることが合金組成をほぼ等原子比率に制御するために必要であることがわかった.この結果について学会発表や学術誌への論文投稿を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
Water-in-oil型エマルジョンを電解液として用いた電析の問題点として微小な水滴が電極と衝突したときのみ反応が起こるため,電析反応が不連続でありめっき速度が遅いことが挙げられる.上述の通り,この手法による合金めっきでは組成を制御するために,拡散層を微小な空間に閉じ込めることが重要である.そのため溶液中の水相が微細構造をもっていれば,water-in-oil型エマルジョンのように水相が閉じている必要はないと考えた.そこで,今後は水相と油相がともに三次元網目状構造をもつことから金属イオンの供給が連続的に起こり,めっき速度の向上が期待できる両連続相マイクロエマルジョンや,それと類似したドメイン構造をもつことで知られるイオン液体について検討する予定である.
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