研究課題/領域番号 |
22J23760
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝野 峻平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | フォトニック結晶レーザ / フォトニック結晶 / 半導体レーザ / 熱マネジメント |
研究実績の概要 |
既存の半導体レーザは,小型・安価・高効率・高制御性をいった特長をもつ一方で,高ビーム品質を維持可能な光出力に限界があり,レーザ加工用光源としての応用が困難であった.本研究は,2次元フォトニック結晶をレーザ共振器として利用することで既存の半導体レーザの課題を解決可能としたフォトニック結晶レーザについて,上記応用を目指し,連続的な電流注入による動作(CW動作)における熱マネジメントおよび高出力・高ビーム品質動作(=高輝度動作)の実現を目標としている. 本年度は,まず,デバイス温度を,十分な内部量子効率・利得が維持可能な温度に抑える実装技術の確立に取り組んだ.また,高輝度動作を実現するためのデバイス設計を検討するために,電流・熱・光の相互作用を考慮し,確立した実装条件下における放熱特性を取り入れたフォトニック結晶レーザのCW発振特性解析を行った.その結果,フォトニック結晶面内の不均一な温度分布によって生じる屈折率分布(バンド端周波数分布)が,共振器面内の光分布の偏りや,ビーム拡がりの増大等を生じることが明らかとなった.そこで,この不均一なバンド端周波数分布を打ち消すように,フォトニック結晶の格子定数の面内分布を補償構造として導入した場合のCW発振特性解析を行ったところ,高輝度CW動作が期待できることがわかった. そして,高輝度CW動作の実証に向けて,大面積の共振領域全体で利得を得られるような電流注入を実現可能な電極や2次元フォトニック結晶に導入する補償構造等,デバイス構造の設計を行った.さらに,これらの設計に基づいて,デバイス作製に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,フォトニック結晶レーザの電流・熱・光の相互作用を考慮した総合的な熱マネジメントにより,半導体レーザ単一チップによる100 W超級高輝度CW動作を目標としている.本目標の達成に向けて,主に,1)実装・放熱技術の確立,2)面内温度分布補償構造の設計,3)面内温度補償構造の試作・深化,の3点に取り組んでいる. 本年度は,活性層の十分な内部量子効率・利得を維持するために,高い放熱性を実現可能な実装技術の検討を行い,CW高電流注入時にもデバイス温度をレーザ発振可能な温度に抑制可能な実装条件を確立することができた.さらに,電流・熱・光の相互作用を考慮したフォトニック結晶レーザのCW発振特性解析を行い,フォトニック結晶の格子定数に意図的な面内分布を補償構造として導入することで,高輝度CW動作が期待できることを見出した.そして,補償構造を導入したデバイスの作製に着手した. 以上のように,前述の3点の取り組みのうち,1)実装・放熱技術の確立,2)面内温度分布補償構造の設計,についてはほぼ完了し,また3)面内温度補償構造の試作・深化にも着手できたため,当初の計画以上に研究が進展していると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,作製したデバイスの詳細な特性評価を進める.次に,評価結果を踏まえて,補償構造の最適化を行う.そして,共振領域の大面積化も進め,共振領域サイズに合わせた補償構造の設計を行う. また,共振領域面内の電流分布制御によって,温度分布を平坦化することも,補償の導入と併せて高輝度CW動作実現の有効な手法と考えられる.そこで,電流分布制御やこれを実現する手法についても検討を進める. そして,出力効率向上に向けた検討も行う.出力効率の向上は,高出力化や,発熱による温度上昇の低減につながる.そのため,光出力に寄与しない損失の低減を狙ったデバイス層構造等の最適化を行う.
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