研究課題/領域番号 |
22J40120
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 綾 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 染色体 / 線虫 / 減数分裂 |
研究実績の概要 |
減数分裂における染色体分離の失敗は、流産・不妊やダウン症などの生殖問題につながる。日本を含む先進国社会では、適齢期夫婦の多くが不妊問題を抱えており、正常な卵子・精子を生み出す減数分裂のメカニズムの理解は喫緊の課題であると考えられる。減数分裂前期、相同染色体同士はペアになり、相同組み換えを起こした上で交叉を形成する。この時、ペアになった相同染色体を安定的に繋いでおくため、シナプトネマ複合体(SC)と呼ばれるタンパク質重合体が、染色体間に重合する。SCはヒトまで保存された、減数分裂に必須のタンパク質複合体である。SCは、減数分裂前期の開始と共に相同染色体間に重合し、交叉が形成されるのを促進した後、段階的に脱重合され、その後、減数第第一分裂が起こる。このため、SCは減数分裂前期の開始と共に、迅速に染色体間に重合し、第一分裂直前には迅速に脱重合する必要がある。我々は、このSC重合と脱重合のメカニズム制御する因子を探索した結果、ヒトまで保存されたAAA型ATPaseである分子シャペロンCDC-48が、SCの重合と脱重合の両方に重要であることを見つけた。今後は、この分子メカニズム及び分子シャペロンの基質の探索を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術的な問題により解析に一部遅延が生じている部分もあるが、概ね免疫染色による解析は順調に進んでいる。線虫cdc-48は、essential geneであるため、ノックダウンはRNAiを一過的に行うことで解析を進めてきた。しかしながらこのノックダウンの方法では、生殖細胞が減数分裂に入る直前の、体細胞分裂にまで影響が出てしまう。このためAID-degronのシステムを適用しようとしているが、AIDタグを負荷すると、CDC-48の機能に悪影響が出てしまうことが明らかになった。今後はこれを改善することを目指している。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、AID-degronのシステムを適用して、タイミングを厳密に制御した上でCDC-48の分解実験を行うことを目指す。これまでの我々の実験より、AIDタグを直接N末端もしくはC末端に負荷すると、CDC-48の機能に悪影響が出てしまうことが明らかになったため、今後は、リンカーを長いものに変える、もしくは比較的フレキシブルなタンパク質構造の部分を狙ってタグを挿入するなどの工夫が必要である。また、タグ付けした線虫株を樹立した後は、これを用いた生化学実験などを行い、相互作用因子の探索を行う予定である。
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