研究課題/領域番号 |
20J23173
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
要石 就斗 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2024-03-31
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キーワード | 寒冷刺激 / 接触皮膚炎 / CHS |
研究実績の概要 |
本年度の研究は以下とおり遂行した。本年度は6カ月間の育児休学(2022年4月~9月)を取得したため、主に2022年10月~2023年3月までの研究結果を報告する。 前年度までの実験によりマウスへの全身の寒冷暴露により、接触過敏反応(Contact hypersensitivity: CHS)の惹起相で炎症反応が減弱することを示した。本年度では主にこれらの実験データの再現性を確認した。フローサイトメトリーにて好中球、樹状細胞、T細胞などの免疫細胞の皮膚への浸潤が減少していることを確認し、耳のwhole mount免疫染色にて樹状細胞の集簇(クラスター形成)を計測し、同様にクラスター形成が低温群で減少していることを確定させた。また寒冷暴露が全身性のストレス応答に関与するかを検証するために、コルチコステロイド阻害薬。アドレナリン阻害薬を用いて同様の寒冷暴露下でのCHS反応を検証した。結果としてどちらの阻害薬を用いても、寒冷暴露にて減弱するCHS反応は復帰しなかった。さらに機能変化の解明にむけて1つの細胞群に注目するにあたり、一連の反応の始まりである角化細胞を選択した。表皮でのqPCRでIL-1αの産生が低下していることから、寒冷暴露により表皮角化細胞での IL-1αを含むPAMPs/DAMPsの放出が抑制され、CHS全体の炎症が低下していると仮説立てた。これを検証するために、寒冷暴露下でCHSの炎症を起こした表皮のbulk RNA seq.を行った。他の実験で示しているように、寒冷暴露下のCHSではIL-1αの低下、IL-1 signalingの低下がみられることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全身の寒冷暴露によりCHSの炎症反応が減弱していることを見つけ、様々な炎症パラメータが変動していることをVivoの実験で評価できている。しかし、研究期間内での論文の投稿にあたり、これが局所(皮膚)の温度低下によるものか、また全身性のストレス応答の結果によるものであるかの区別をつける必要がある。コルチコステロイドおよびアドレナリンの阻害薬を用いた実験を行っているが、全身性の影響を完全に除外できないため、局所の温度低下のみで得られる結果と断定できない点が課題となっている。局所冷却装置を作成し、局所のみに冷風を当てる実験系や、全身の寒冷暴露時間を数時間程度に短くした場合の表現型を確認する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのVivoでの実験データおよび表皮のRNA-seq.のデータから、寒冷暴露下ではCHSの正常な応答である酸化ストレス反応が起こっていないと予想される。これを検証するために、初代培養角化細胞を用いて温度変化とハプテン刺激による角化細胞のROS産生、それに続く細胞外ATPの産生を評価する予定である。また寒冷暴露下で酸化ストレス反応が起こらない機序の解明として、抑制性に働く因子の抽出、TLRの認識機能の評価、角化細胞での熱産生などに着目して進める予定としている。さらにこの年度が大学院生期間および学振DC1の最終年度であるため、これまでに得た結果を論文としてまとめ、投稿することを予定している。
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