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2022 年度 実績報告書

Cryo-EM による V-ATPase の構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 20J00162
配分区分補助金
研究機関大阪大学
特別研究員 中西 温子  大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 特別研究員(PD)
研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2024-03-31
キーワードCryo-electron microscopy / 低温電子顕微鏡 / V-ATPase / 構造解析
研究実績の概要

V-ATPase (液胞型 ATPase、以下 VoV1 と記す) は、ATP の加水分解エネルギーを利用してプロトンを膜内外へ輸送することで、細胞内外の酸性環境を制御する役割を果たしている。VoV1 はほとんどの細胞内オルガネラ膜のほか、破骨細胞やがん細胞といった組織特異的な細胞膜にも局在することから、その機能・構造に関する知見は疾病の理解や創薬においても重要である。令和3年度の研究では、ラット脳組織およびがん細胞から VoV1 を精製した。そして低温電子顕微鏡 (Cryo-EM) を用いて観察した結果、VoV1 複合体粒子を観察することに成功した。しかし、単粒子解析に適した粒子密度で凍結試料を作製することができなかったことから、精製試料の濃度不足が示唆された。そこで令和4年度の研究では、がん細胞由来 VoV1 の大量精製を行い、単粒子解析に適した凍結試料作製条件を探索した。
がん細胞由来 VoV1 の大量精製を行った結果、精製試料に VoV1 複合体と共にサブ複合体が混在していた。サブ複合体は単粒子解析の妨げとなるため、新たな精製手法によりサブ複合体を分離し、高純度の VoV1 複合体試料を精製した。得られた VoV1 試料を用いて、単粒子解析に向けたクライオグリッドスクリーニングを行った結果、解析可能な画像データを取得することができた。一方、オルガネラ膜上で実際に機能している VoV1 を解析するためのトモグラフィー解析においては、高分解能解析を行うための凍結試料作製方法の検討を行うと共に、傾斜画像シリーズのデータ取得方法の最適化を試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究を通して、哺乳類細胞由来 VoV1 の単粒子解析を行う上で重要な試料精製方法の確立および凍結試料作製条件のスクリーニングを行った。その結果、ラット脳組織およびがん細胞由来 VoV1 粒子を Cryo-EM を用いて観察することに成功した。また、がん細胞由来 VoV1 を大量精製し、様々な条件で凍結試料を作製した結果、単粒子解析を行うための VoV1 画像データを取得することに成功した。一方で、VoV1 が局在するシナプス小胞のトモグラフィー解析については、現状の凍結試料作製方法では解析が困難であったことから、試料作製方法の検討を行っている。また、傾斜画像シリーズのデータ取得方法についても検討を行っており、より検出量子効率の高いカメラを用いてデータを取得する方法を導入し始めている。傾斜画像シリーズのデータ取得には至らなかったものの、高分解能構造解析に向けたデータ取得方法や、解析手法に関する知見を得られており、研究全体としてはおおむね順調に進捗していると評価している。

今後の研究の推進方策

今後の研究においては、取得した VoV1 複合体の Cryo-EM 画像データを用いて単粒子解析を行う。並行して、より単分散性の高い VoV1 複合体試料の調製方法についても探索する。VoV1 を可溶化するための界面活性剤が、その単分散性に影響する可能性があることから、様々な界面活性剤で可溶化した場合の VoV1 の単分散性を比較したい。界面活性剤の種類を変えることで VoV1 の単分散性が向上した場合、新たにデータ収集を行い、単粒子解析を行う。解析結果を比較し、より高分解能の密度マップを用いて VoV1 のモデルを構築する。一方、シナプス小胞のトモグラフィー解析においては、より検出量子効率の高いカメラを用いてデータ取得を試みる。シナプス小胞に存在する VoV1 の可視化を最重点課題として取り組むと共に、高分解能解析に向けたトモグラフィー解析手法を探索する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Structures of multisubunit membrane complexes with the CRYO ARM 2002022

    • 著者名/発表者名
      Gerle Christoph、Kishikawa Jun-ichi、Yamaguchi Tomoko、Nakanishi Atsuko、Coruh Orkun、Makino Fumiaki、Miyata Tomoko、Kawamoto Akihiro、Yokoyama Ken、Namba Keiichi、Kurisu Genji、Kato Takayuki
    • 雑誌名

      Microscopy

      巻: 71 ページ: 249~261

    • DOI

      10.1093/jmicro/dfac037

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Structural basis of unisite catalysis of bacterial F0F1-ATPase2022

    • 著者名/発表者名
      Nakano Atsuki、Kishikawa Jun-ichi、Nakanishi Atsuko、Mitsuoka Kaoru、Yokoyama Ken
    • 雑誌名

      PNAS Nexus

      巻: 1 ページ: ー

    • DOI

      10.1093/pnasnexus/pgac116

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Structural snapshots of V/A-ATPase reveal the rotary catalytic mechanism of rotary ATPases.2022

    • 著者名/発表者名
      岸川淳一、中西温子、中野敦樹、横山謙
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Structural basis on the rotary mechanism of Vo domain by proton translocation2022

    • 著者名/発表者名
      西田結衣、岸川淳一、中西温子、中野敦樹、横山謙
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Molecular Basis of the Chemo-Mechanical Coupling Mechanism in the ATP-Driven Rotation of ATP Synthase FoF12022

    • 著者名/発表者名
      中野敦樹、岸川淳一、中西温子、横山謙
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [備考] クライオ電子顕微鏡によりATP合成酵素 FoF1 のスタートアップ機構を解明

    • URL

      http://www.protein.osaka-u.ac.jp/achievements/20220715/

  • [備考] クライオ電子顕微鏡によりATP合成酵素FoF1のスタートアップ機構を解明

    • URL

      https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20220715_345_release_ka01.html

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公開日: 2024-12-25  

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