半導体結晶の作製プロセスでは装置内の流動や熱輸送といった移動現象が結晶の品質を大きく左右する。それゆえ、高品質な結晶を安定的に供給するためには、プロセスの操作中に移動現象の解析と制御を行うことが望ましい。 しかし、装置内部は非常に高温となり観察が困難なことに加え、数値計算にも長大な時間を要するため、それらは困難である。それに加えて、数値計算により得られる結果は複雑な流動現象であり、高品質な結晶を作製する鍵となる重要な現象を瞬時に断定することが難しい。以上のような理由から、操作中に解析と適切な制御を行うことが難しく、現在は経験に基づいたブラックボックス的な制御に頼らざるを得ない状況である。 そこで本研究では、データ科学を用いることで、対象のプロセスに顕在する重要な移動現象を高速に解析し、その制御手法を瞬時に提案することが可能な高速最適化手法の構築に取り組んだ。本研究ではまず初めに、制御手法の迅速な提案のために、ベイズ最適化と呼ばれる機械学習を用いた効率的な最適化手法を適用した。その結果、パラメータの全通りの組み合わせ数に対してわずか約20%のみの試行回数で最適解を得ることに成功した。次に、説明可能機械学習を用いて複雑な現象から鍵となる現象を自動的に抽出する手法の提案に成功した。最後に、Physics Informed Neural Networksと呼ばれる機械学習を用いることで、数値計算自体の高速化を行い、操作中にも実行可能な高速な解析手法を実現した。これら3つの成果により、実験操作中にでも実行可能な高速な解析とそれに基づいた制御手法の提案が可能となる。
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