研究実績の概要 |
本年度は、(1) FDTD法(電磁場数値計算)を用いた構造設計、(2) リソグラフィとナノインプリントによる微細構造作製などを駆使し、「高透過率・広角拡散・波長分散なし」を並立するモルフォ型ディフューザーの実証を目指した。概要は以下の通りである。 (1) リソグラフィで作製可能な2次元ナノパターンを設計し、FDTD法を用いて構造最適化を行った。可視光全域で均一な光拡散を実現するため、短波長と長波長の光をそれぞれよく回折する2種類のナノパターンを設けた両面構成とし、回折格子の虹色を防ぐ乱雑さは分布関数により導入した。その結果、シミュレーション上で「透過率85%, 角度広がりFWHM 69°, 波長分散なし」が得られ、透過率と拡散性の双方で従来型(散乱に基づく)を凌駕することが分かった。 (2) 設計したナノパターンをフォトリソグラフィ(i線ステッパー)とドライエッチングによりSiウエハ上に作製し、UV硬化樹脂にナノインプリントすることで、モルフォ型ディフューザーの試作を行った。光学測定の結果、本試作品は「透過率85%, 角度広がりFWHM 66°, 波長分散なし」と設計値に近い性能を示し、また異方的な構造設計により、従来型では困難だった異方拡散も実現した。これらの結果は、モルフォ型ディフューザーの制御性の高さを示唆しており、今後様々なナノパターンを設計・作製することで、拡散角と方向性(等方・異方性)の制御が期待できる。 以上より、モルフォ型ディフューザーの実証に成功したと言える。しかし、透過拡散光の分布を観察すると、LED光に対しては異方的で滑らかな光拡散を確認できたものの、指向性の強いコリメート光では長方形構造の回折に起因する十字線が生じるなど、いくつか課題が残っている。
|