研究課題/領域番号 |
21J20593
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鳥井 健司 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | フォトクロミック分子 / 光スイッチング蛍光分子 / BODIPY / フルギミド |
研究実績の概要 |
本年度は、フォトクロミック分子であるフルギミド(fulgimide)と蛍光色素であるBODIPYを共役的に結合した光スイッチング蛍光分子Ful-Bodyの合成に取り組んだ。合成上の観点から、Ful-Bodyの分子設計と反応経路を再検討し、目的分子の開発に向けた設計指針を改めた。Ful-Bodyの部分構造として新規にフルギミドを合成した。合成したフルギミドは光照射による可逆的な吸収スペクトルの変化を示し、期待した光異性化反応が起きていることが確認できた。また、合成上で鍵となる非対称型BODIPYの合成に成功し、その蛍光特性を評価した。現在(2022年4月現在)、BODIPYとフルギミドの合成がそれぞれ完了し、鈴木・宮浦カップリング反応で両分子を結合するための反応条件を検討しているところである。 また、光スイッチング蛍光分子に関する論文として取りまとめ、その議論の中で、光スイッチング蛍光分子の光安定性に関わる要因について言及することができた。さらに、この考察を反映させた新たな分子設計戦略を練ることができた。次年度はそれらの知見を活かしつつ、目的分子の合成を目指す。また、合成した分子は紫外可視吸収分光光度計、蛍光光度計、高速液体カラムクロマトグラフィーなどの測定データから解析し、その光学物性を評価する。さらに、生細胞イメージングに向けたFul-Bodyの分子改変とタンパク質修飾を行い、その応用展開に繋げる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記した通り、フルギミドとBODIPYの一体型分子Ful-Bodyの合成に取り組んだが、合成に難航し、分子設計と反応経路を再検討したため、目的分子の合成が遅れた。最終的に、鈴木・宮浦カップリング反応を利用することで、目的分子の開発に向けた設計指針を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フルギミドとBODIPYの両方の分子構造を併せ持つ分子Ful-Bodyを、新規光スイッチング蛍光分子の合成を完了させ、その光学特性の評価を行ったうえで、生物学的な応用展開を探ることが目的である。Ful-Bodyの光学特性については、光照射における吸収・蛍光スペクトルの変化などを、紫外可視吸収分光光度計、蛍光光度計、高速液体カラムクロマトグラフィーなどの測定データから解析し、定量的に評価を行う。 合成したFul-Bodyに関して、期待された蛍光スイッチングが示された場合、次に生体応用に向けて水溶性と膜透過性の評価を行う。また、それらの特性を考慮したうえで必要であれば、官能基修飾などの分子改変を行う。更に、Ful-Bodyが修飾された抗体を用いて、免疫染色法による蛍光イメージングを行い、Ful-Bodyの細胞内での蛍光スイッチングの可能性についても評価する予定である。 また、本研究で得られたFul-Bodyの分子設計や蛍光特性などに関する知見は、結果を取りまとめ次第、学会発表を行う予定である。
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