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2021 年度 実績報告書

3Dプリントを用いた軽量・衝撃吸収・形状記憶メタマテリアル開発

研究課題

研究課題/領域番号 21J20611
配分区分補助金
研究機関大阪大学

研究代表者

鐘ヶ江 壮介  大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワードメカニカルメタマテリアル / PXCM / bistable / 有限要素法 / 大変形 / 異方性 / パラメトリックモデリング
研究実績の概要

材料の物性は,原子配列とそれらの原子を取り巻く電子の状態に由来する.原子や電子の振る舞いを模倣したメタマテリアルの創製によって,希少元素のもつ特性を他のより安価な元素に持たせることが期待される.これまでの研究で,原子の振る舞いを模倣した格子構造制御による機能化の試みとして,原子配列を模倣した格子構造制御によるメタマテリアルの新しい設計・創製の指針を示した.本研究では,結晶性材料の相転移を模擬した構造転移を発現するセル格子多孔体(PXCM)の設計手法を確立し,実際にPXCMを3Dプリントにより造形し,その構造転移挙動の評価と設計手法の検証と改良を目的とする.
まずPXCMのモデルをパラメトリックモデリングにより簡便に作成できるようにした.これにより,有限要素法(FEM)シミュレーションモデルや3Dプリント用モデルを容易に作成でき,設計変数の異なる多数のモデルの解析が可能となった.また,設計したPXCMの変形挙動の異方性を解析するため,周期境界条件を設けた単位格子モデルに対して種々のひずみを加えるFEMシミュレーションを実行した.その結果,bistableになると予想された方向以外の方向でもbistableになる可能性が示唆された.設計したPXCMの力学特性の異方性を評価するため、球と真直梁で構成された面心立方格子(FCC)構造やダイヤモンド構造の力学特性異方性と比較した.FCC構造やダイヤモンド構造は大変形の初期は伸縮変形モードで変形し,変形量が大きくなると梁が座屈して曲げ変形モードで変形した.一方,設計したPXCMは初期段階から曲げ変形モードで変形した.曲げ変形モードを示したPXCMはFCC構造やダイヤモンド構造と比べて剛性や強度が低かった.伸縮変形モードで変形できるように設計することで,構造性材料に求められる高い剛性や高い強度を持つPXCMを実現できると期待できる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度に計画していたパラメトリックモデリングによりセル格子多孔体を設計,構造転移の変形挙動と力学的特性を有限要素法により解析を行うことができた.有限要素法のシミュレーションでエラーが多発したため,設定した全ての条件でのシミュレーションは年度内に完了することができなかったが,数種類のパラメータでは結果が出力されたので,来年度の計画にあるシミュレーションと実験の比較は可能なため概ね計画通りに進められる.エラーの要因としては,有限要素モデルのメッシュが最適ではないことやひずみ量を徐々に大きくさせるときのステップサイズが大きいことが挙げられる.今後このシミュレーション条件の最適化を継続して行う.

今後の研究の推進方策

当初の計画通り,来年度は実験と比較することでシミュレーションの妥当性を検証し,機械学習を用いて求める力学的特性を満たす設計を最適化する手法を確立するとともに,造形精度がメタマテリアルの特性に対する影響を検証し造形条件を補正する.さらにせん断的な相転移を生じるメタマテリアルを開発し、実際のマルテンサイト転移に近い相転移を発現するPXCMを作成し、PXCMの特性制御の自由度を向上させる.
今年度でシミュレーションによって解析した変形挙動の異方性を実験的に調べるため,シミュレーションで加えたひずみ場を再現するように材料試験を行う.その材料試験の結果を元にシミュレーション結果を校正する.3Dプリンタを用いて試料を造形する際に造形誤差が生じるので,CADモデルと造形物との間の形状および寸法の誤差を測定する.造形精度がメタマテリアルの力学特性に対する影響を検証し造形条件を補正する.
機械学習を用いて求める力学特性を満たす設計を最適化する手法を確立する.シミュレーションや実験から得られる結果を元に,機械学習を用いて設計パラメータと変形挙動を含めた力学特性との関係を解析し,求める力学特性を発現するような設計パラメータを予測可能にする.
また,これまで開発してきた構造に加えて,より実原子からなる結晶が発現する相変態に近いせん断的な相変態を生じるメタマテリアルの開発に取り組む.本研究ではこれまでに,結晶性材料の原子配列を模倣した格子構造制御による機能化の試みとして,原子配列を模倣した格子構造制御によりメタマテリアルを設計・開発してきた.原子配列の模倣に加えて,結晶性材料の構造変化を模倣するため,せん断的な構造変化を示すメタマテリアルの設計手法を確立する.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] バイメタルを使用した熱誘起相転移格子構造体2022

    • 著者名/発表者名
      永山隼,鐘ヶ江壮介,奥川将行,小泉雄一郎
    • 学会等名
      日本金属学会 2022年春期(第170回)講演大会,ポスター発表
  • [学会発表] Geometric design and Inverse design of Multi-Axial Bistable Lattice Mechanical Metamaterial Inspired by Atomic Arrangement of Crystals2022

    • 著者名/発表者名
      Sosuke Kanegae, Masayuki Okugawa, Yuichiro Koizumi
    • 学会等名
      2022 Materials Research Society Spring meeting &exhibit, (Abstract査読有,口頭発表申込受理済)
    • 国際学会
  • [学会発表] 代表体積要素モデルを用いた有限要素法による多軸双安定構造の大変形挙動解析2022

    • 著者名/発表者名
      鐘ヶ江壮介,奥川将行,小泉雄一郎
    • 学会等名
      日本計算工学会 第27回計算工学講演会,(Abstract査読有,口頭発表申込受理済)
  • [学会発表] Evaluating Bistability of Phase Transforming Cellular Materials with Finite Element Analysis2022

    • 著者名/発表者名
      Sosuke Kanegae, Masayuki Okugawa, Yuichiro Koizumi
    • 学会等名
      15th World Congress on Computational Mechanics & 8th Asian Pacific Congress on Computational Mechanics, (Abstract査読有,口頭発表申込受理済)
    • 国際学会
  • [学会発表] 原子配列を模倣した多軸bistable格子構造メタマテリアルの設計と機械学習による力学特性最適化2021

    • 著者名/発表者名
      鐘ヶ江壮介,永山隼,奥川将行,小泉雄一郎
    • 学会等名
      スマートプロセス学会 2021年度スマート・アディティブ・マニュファクチャリング研究発表会
  • [学会発表] バイメタルを用いた形状記憶特性を発現するセル格子の創製2021

    • 著者名/発表者名
      永山隼,鐘ヶ江壮介,奥川将行,小泉雄一郎
    • 学会等名
      スマートプロセス学会 2021年度スマート・アディティブ・マニュファクチャリング研究発表会
  • [学会発表] バイメタルを使用した熱誘起相転移を示す格子構造の創製2021

    • 著者名/発表者名
      永山隼,鐘ヶ江壮介,奥川将行,小泉雄一郎
    • 学会等名
      Conference on 4D and Functional Fabrication 2021
  • [学会発表] 衝撃吸収・形状記憶双安定(bistable)セル格子の構造最適化設計2021

    • 著者名/発表者名
      鐘ヶ江壮介、永山隼人、奥川将行、小泉雄一郎
    • 学会等名
      日本機械学会 マイクロナノ工学部門COMSOLによるマルチフィジックス解析 基礎からの実習と最新の活用事例紹介
    • 招待講演
  • [図書] メタマテリアルの設計、作製と新材料、デバイス開発への応用2022

    • 著者名/発表者名
      中川勝,岡本敏弘,藤井雅留太,長尾忠照,花村克悟,鐘ヶ江壮介,奥川将行,小泉雄一郎ら
    • 総ページ数
      508
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-876-0

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公開日: 2022-12-28   更新日: 2023-08-01  

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