研究課題/領域番号 |
21J20639
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
觀音 裕考 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ミトコンドリアダイナミクス / ミトコンドリアDNA / 核様体ダイナミクス |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは細胞内共生を起源としており、内部に独自のDNAであるミトコンドリアDNA(mtDNA)を保持している。mtDNAは複数コピー集まり、DNA結合タンパク質と結合した核様体と呼ばれる構造を形成している。この核様体の形態はミトコンドリアの膜や機能低下と連動して大きく凝集することが知られており、ミトコンドリア機能低下マーカーとしての利用も期待される。しかし、核様体形態を変化させる分子機構や、核様体形態が変化する詳しい条件については未だ明らかになっていない。また、核様体そのものに関する基本的知見が少なく、解析することが困難となっている。そこで当研究では、核様体の形態変化のメカニズムを解明し、核様体の動態についての基盤的な解析を行うことを目的としている。 2021年度は、核様体形態の形態変化メカニズムの理解を進めるための基盤的な研究を実施した。HeLa細胞とsiRNAを用いたスクリーニングを行い、その結果として、発現抑制すると核様体が大きくなる候補因子群を得ることができた。さらに、これらの因子の詳細解析を行うため、これらの因子群をゲノム編集により遺伝子欠損させた HeLa細胞を構築し、解析を行った。また、HeLa細胞にこれらの遺伝子産物の機能に関わる様々な阻害剤で処理し核様体形態の変化を観察した。その結果、確かにこれらの因子の抑制条件では核様体の凝集がみられることが明らかになった。2022年度には、核様体の形態変化とミトコンドリア膜形態の関連に着目してそのメカニズムをさらに詳細に解析するとともに、生細胞観察による動態解析についても実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従って、2021年度は核様体の形態変化メカニズムの解析の実験を実施した。ヒト由来の培養細胞であるHeLa細胞を用いて、ミトコンドリアとミトコンドリアDNA (mtDNA)を同時に蛍光色素で染色することで、生細胞内でのミトコンドリアと核様体の構造を観察することができる。この細胞に様々なsiRNAで処理したのちに細胞を観察することで、ミトコンドリアと核様体の形態に影響を及ぼす遺伝子群の同定を目指して研究を行っていたところ、これまでに複数の候補因子群を同定することができた。そこで、これらの候補遺伝子およびそれらの関連遺伝子、また遺伝子産物の機能に影響を及ぼす可能性のある化合物などを用いて、培養細胞への効果を観察する実験を実施した。その結果として、これまでにmtDNAとの関連がほとんど議論されていない新規の核様体制御機構を見出すことができた。 スクリーニングから得られた因子群を介した核様体凝集の原因を解析したところ、ミトコンドリア膜の形態と核様体形態が非常に密接に連携し変化することが明らかになってきた。また、これらの因子群を遺伝子欠損したHeLa細胞の基本的な表現型についても収集し、確かに核様体の制御に関わることを示すことができた。以上のことから、2021年度は当初に期待したように研究を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、今回同定した候補遺伝子の発現抑制によりミトコンドリア膜形態が変化し、それに伴って核様体が大きくなることが示唆された。そこで今後はどのようにミトコンドリア膜および核様体に影響を与えているかを突き止めるための研究を実施する。ミトコンドリア膜の融合・分裂活性の変化や、培養細胞に様々な関連の薬剤を添加した時のミトコンドリア膜と核様体の形態を解析することや、ミトコンドリア膜と核様体の協調的な制御機構を調べることで、詳細な分子機構を見出すことができると考えている。 また、2022年度には核様体の動態解析にかかわる実験にも着手することを計画している。核様体の動きに関する基本的な情報は未だ少なく、ライブ観察を行うことによってまず核様体が安定して観察できる条件を探索する。その後、そのライブ観察のデータをImageJ等の画像解析ソフトで解析することによって定常状態における核様体の移動速度や移動距離、移動している時間、停止時間などの核様体動態にかかわる基本的な情報について収集する予定である。
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