研究課題/領域番号 |
21J20930
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥 裕理 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 銀河形成 / 数値流体シミュレーション / 超新星爆発 / 星形成 / 銀河アウトフロー |
研究実績の概要 |
超新星フィードバックモデルの開発を行い、その成果を論文にまとめて投稿した。先行研究では超新星爆発が周辺のガスへ与える影響の一側面のみがモデル化されていたのに対し、本研究で開発したモデルでは、超新星爆発が星間ガスへ運動量を与える力学的効果と、ガスを加熱し高温の銀河アウトフローを駆動する熱的効果の両方を考慮した。超新星フィードバックが持つ力学的効果と熱的効果の二面性は近年の高分解能シミュレーションによってその重要性が指摘され始めてきたことであり、この二面性を銀河スケールのシミュレーションに適用できるようにモデル化を行ったことが新規な点である。 超新星フィードバックの力学的効果をモデル化するにあたっては、我々が行ったスーパーバブルのシミュレーション結果を使用し、力学的フィードバックの金属量依存性を考慮したモデルを構築した。 構築したモデルを使用して孤立銀河のテスト計算を行い、力学的フィードバックが星形成を抑制する一方で、熱的フィードバックが銀河内で生産された金属を銀河外へ運ぶ役割を持つことを示した。近い将来のすばる望遠鏡等での観測によって、銀河外の金属分布の観測的理解が進むと期待されており、本研究で開発した超新星フィードバックモデルは、観測に先立って精度の高い理論的予言を行うために重要である。実際の観測に向けた予言を行うためには、宇宙論的シミュレーションを実行する必要があり、それは今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目標では、今年度中に宇宙論的銀河形成シミュレーションを実行する計画であったが、超新星フィードバックモデルの開発に時間を費やしたため、計画からは半年程度の遅れが生じている。一方で、研究実績概要で述べたような超新星フィードバックの二面性を考慮するモデル化は、研究開始当初では考慮できていなかったことであり、時間を費やした代わりにより良いモデルの構築ができたと考えている。現時点では計画から遅れてはいるが、モデル開発は本研究を遂行する上での中核を成す部分であり、年度内にモデル開発を終えて論文を投稿できたため、小程度の遅れと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画通り、構築したモデルを用いて宇宙論的銀河形成シミュレーションを実行し、観測との比較に向けた解析を行う予定である。大規模な計算を効率良く実施するために、GADGET4-Osaka (Romano et al. 2022) コードにモデルを移植する。高精度なシミュレーションを実施するために流体計算にもアップデートを加え、コードテストと最適化を行ったのちに宇宙論的銀河形成シミュレーションを実行する。解析ではすばる望遠鏡のPFS分光器を念頭に置き、銀河周辺での金属分布に注目して調べる予定である。金属量や金属組成比は、金属が銀河外へ流出するプロセスの痕跡が残っている観測可能量であり、これらの物理量を将来の観測に向けて予言することを目標にする。
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