研究課題
本研究の目的は、ナノ空間制御、活性点制御、及び計算化学を統合することで、酸素還元反応に向けた新規な高機能性電極触媒の開発及び他反応への応用である。一年目には、有効なナノ空間制御手法の開発及び触媒合成法の確立を目標としていた。これまでに、申請者は、ナノサイズの金属原子を担持した炭素系触媒の合成に成功しており、活性点をナノレベルで制御できる手法の開発に成功している。一方、電極触媒の細孔構造の制御は、高性能・高性能電極触媒の開発も重要であることから、高機能性電極触媒の開発にはナノ空間の精密制御も必要不可欠である。そこで、当該年度では、精密なナノ空間制御手法を開発し、これまでに申請者が独自に開発してきた活性点制御手法との融合を目指した。当該年度において、申請者は界面活性剤を用いたソフトテンプレート法を用いて、有効な活性点であるCoNxを含んだメソポーラスカーボンを合成し、酸素還元反応に対して高い物質拡散性を示す新規電極触媒の開発に成功した。また、ゼオライトを用いたハードテンプレート法、そして二酸化炭素を用いた賦活法から、ミクロ孔を多く持つ電極触媒の新規合成法を開発した。これら種々の触媒の特性評価及び性能評価の結果から、ミクロ孔の付与によって、酸素還元反応に対し、開始電位及び電流密度が変化することを見出した。このように、申請者は触媒の細孔構造に対して、様々手法でアプローチし、ナノ空間の制御に成功した。これらの研究成果を査読付き論文として発表し、内1報はNew J. Chem.誌のフロントカバーに選定されたことからも、高い評価を受けたと考えている。また、これらの内容を学会で積極的に発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
申請者は、実験と計算化学を用いた高性能電極触媒の開発に取り組んでいる。通常では困難であった(1) 活性点と、(2) 細孔構造のそれぞれの精密な制御を可能とした新規合成手法を提案し、その両研究において、優れた成果をあげた。具体的に、電極触媒の活性点制御は、容易ではないと考えられており、当初は難航すると思われたが、電極触媒に対してイオン交換法を用いることで、1つ目の課題を解決した。更に、触媒の細孔構造の制御においては、ハードテンプレート法やソフトテンプレート法などの様々な手法を用いたことで、触媒性能が触媒の細孔構造に非常に大きく影響することを見出した。また、これまで様々な触媒を合成した経験から、有機金属構造体を用いた均一な細孔構造を持つ触媒が現行の白金触媒を超える性能を示したことを明らかにした。これらの結果を、現在査読付き論文として投稿している。更に、開発した新規触媒設計法を水素発生反応にも応用し、高い性能を持つ触媒の合成に成功した。このことから、本手法が様々な電極反応の触媒に対して有効であることを示した。以上のことから、当初期待していた以上の進展があったと考えている。これらの成果は、New J. Chem.誌のフロントカバーに選定されたことからも、高い評価を受けたと考えている。
申請者は、今後の研究において、これまで開発した様々な合成法を用いて、「活性点制御とナノ空間制御が両立した手法の開発」及び、昨年度から継続している「計算化学による三次元反応機構の解明」を目指している。まず、1つ目の活性点制御とナノ空間制御が両立した手法については、金属有機構造体を前駆体として用いた触媒が必要不可欠であると考えている。そのためには、種々の細孔構造を持つ金属有機構造体の合成が必要不可欠である。そこで、金属有機構造体及び触媒反応に深い知見を持つHeinrich-Heine大学のJaniak教授の下に従事し、金属有機構造体の合成及び、それを用いた触媒反応についての知見を深めていく。得られた知見を用いて、前駆体及び電極触媒の合成を行っていく。また、計算化学による三次元反応機構の解明については、前年度から同様に続けていく。上記の有機金属構造体を用いた電極触媒の特性評価や触媒性能評価等の実験結果を用いて、実験及び計算化学の両面からフィードバック的に研究を進めていく。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
New Journal of Chemistry
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