研究実績の概要 |
本年度は、上肢と下肢、四肢と体幹といった異なる筋間の協調運動を制御する神経メカニズムに関して経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて神経的結合性という観点から検討を行った。これらをまとめた研究成果はポルトガルで開催された脳刺激に関する国際会議5th International Brain Stimulation Conferenceにて発表を行い、国内外の研究者と意見の交換を行なった。 さらに次年度以降に実施予定である、ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)と機能的電気刺激(FES)組み合わせた、複数筋協調運動の向上を目指した新たな神経リハビリテーション法の開発に向け、その基盤システムの構築に取り組んだ。BCIに関しては、脳波の計測・解析技術の習得を試みたことに加え、脳波のリアルタイム解析を基にFES装置を制御するシステムの構築を進めた。構築したシステムを用いた予備実験から、それらのシステムが正常に動作することが確認されており、今後BCIの研究を速やかに進めることができると考えられる。また、BCIと組み合わせて使用することが予定されているFESに関しては、まずはFESそのものの影響を検証するために、脊髄興奮性や皮質脊髄路興奮性の評価が可能な神経生理学的な計測を用いて、その効果を調べた。特にFESが上肢筋 (Cao, Sasaki et al., 2022, Neuroscience Letters)、体幹筋 (Sasaki et al., 2023., Experimental Brain Research)、下肢筋 (Yuasa, Sasaki et al., 2023, Plos One)などのそれぞれの身体部位の制御に関わる神経活動に及ぼす影響を調べた研究成果はいずれも国際誌に掲載された。
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