研究課題/領域番号 |
22J10634
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水原 啓太 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 実験心理学 / 呼吸位相 / 知覚 / 事象関連電位 / 生理心理学 |
研究実績の概要 |
本年度は,呼吸位相によって視覚刺激の検出感度が変わるのかについて検討した。本実験の前に学生11名を対象に予備実験を行った。実験参加者には,自然に鼻呼吸をしながらランダムな時間間隔で対提示された2枚の顔画像から恐怖表情を選択するように求めた。予備実験の結果,鼻から息を吐くときよりも吸うときのほうが恐怖表情を正しく選択できた割合が高いことが示唆された。この結果を踏まえて査読付き事前登録論文(Registered Report)を投稿し,受理された後に本実験を実施した。本実験には学生36名が参加した。実験参加者は予備実験と同じく恐怖表情を選ぶ課題に加えて,ガボールパッチのコントラストを弁別する課題も行った。この課題では,実験参加者は対提示されたガボールパッチからコントラストの高いほうを選ぶように求められた。本実験では課題中の脳波も記録した。本実験の結果,次のことが示された。(1)予備実験と同様に,鼻から息を吐くときよりも吸うときのほうが恐怖表情を正しく選択できた割合が高かった。(2)ガボールパッチのコントラストの弁別精度は呼吸位相間で同程度だった。(3)情動性の有無にかかわらず,刺激に対する事象関連電位(event-related potential: ERP)には呼吸位相の影響が認められなかった。これらの結果から,吸気時に視覚刺激の検出感度が高まるという効果は情動性を含む視覚刺激に限定される可能性が示唆された。また,頭皮上で測定できるERPは大脳皮質の電位変化を反映するので,情動視覚刺激の検出感度に及ぼす呼吸位相の影響は皮質ではなく皮質下の経路で生じている可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実験を実施して論文化されたので,順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた知見の拡張を目指していく。具体的には,鼻から息を吸うと検出感度が高まるという知見が恐怖以外の表情でも認められるのかについて検証する。
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