フラーレン/ペンタセンPN接合界面において、界面の電荷状態・光学応答を単一分子スケールで観測し、その分子配列依存性、吸着サイト依存性を解明した。この際、分子の配列状態・吸着状態を原子間力顕微鏡(AFM)、単一分子の電荷状態をケルビンプローブ顕微鏡(KPFM)、単一分子の光学応答を光誘起力顕微鏡(PiFM)を用いて観測した。AFMでは探針先端と試料分子との間に働くファンデルワールス力を計測することによって表面形状を観測し、KPFMでは探針と試料分子との間に電圧を印加した時に働く静電気力を計測することによって分子の電荷状態を観測し、PiFMでは探針試料分子間に光を照射したときに働く光誘起力を計測することによって分子の光学応答を観測した。 (1)AFMによるフラーレン分子のペンタセン薄膜に対する吸着サイトの解明: ペンタセン薄膜表面に対してフラーレン分子を蒸着すると、フラーレンはペンタセン分子膜の欠陥内に入り込むことが分かった。またこの際フラーレンは、下層のペンタセン分子の間に吸着するもの(フラーレンA)と、下層のペンタセン分子直上に吸着するもの(フラーレンB)があることが分かった。 (2)AFM/KPFM/PiFMの同時計測によるフラーレン/ペンタセンPN界面の電荷状態・光学応答の単一分子スケール観察: フラーレンAとフラーレンBに対してAFM/KPFM/PiFMの同時計測を行った。AとBに対してPiFM計測を行ったところ、分子内のPiFMの分布がAとBで異なっており、Aではフラーレン分子のの電子軌道の分布のように分布していたのに対して、Bでは全体的に広がって分布していた。これは、PN界面での電荷移動や界面双極子の有無によってフラーレン分子のエネルギー状態が変化したからであると考えられる。
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