アンチセンス核酸(ASO)は新たな創薬モダリティとして大きな注目を集めている。薬物プロファイルの改善を図ってASOにはリン酸部や糖部へ化学修飾が導入されるが、その化学修飾の疎水性からASOがタンパク質へ吸着し毒性を呈する例が知られている。疎水性の高い糖部修飾核酸を有するASOほどタンパク質結合能や毒性が高い傾向にあるという報告から着想を得て、親水性アルキニル置換基の導入によってASOのタンパク質への吸着を抑制し毒性を低減できるのではないかと考えその合成と評価を行った。 薗頭反応によって6種類の親水性アルキニル置換基を核酸塩基部へと導入し、各ホスホロアミダイト体への変換を経て親水性置換基を毒性ASOへと導入した。各修飾体の親水性をCLogPの推測値で比較したところ、置換基導入によってCLogPが減少したため各修飾体の親水性は増加したと考えられる。得られた修飾ASOのタンパク質結合能をゲルシフトアッセイによって評価したところ、親水性アルキニル置換基の導入はタンパク質結合能を抑制しなかった。一方で、コントロールとして導入した1-デシンはタンパク質結合能を大きく向上させたことから、核酸糖部やリン酸部の疎水性に限らず塩基部も含め、より一般的にASOの疎水性とタンパク質結合能には相関があると考えられる。また、各修飾ASOの毒性を評価したところ、トリエチレングリコール修飾配列のみで毒性の低減が認められた。親水性あるいは疎水性置換基修飾されたナノパーティクルでは結合タンパク質が異なるという報告があることから、親水性置換基の導入によってASOの結合タンパク質のプロファイルに変化があり毒性が低減されたのではないかと考えられた。本研究では、これまで報告のなかった親水性置換基の導入によるASOのタンパク質結合能や毒性への影響を明らかにし、低毒性ASOを創出する上で貴重な知見が得られたと考えられる。
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