研究課題/領域番号 |
22KJ2149
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中南 友里 大阪大学, 歯学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / 炎症応答 / 小胞体ストレス応答 |
研究実績の概要 |
これまでの研究成果により、マクロファージにおける炎症応答の増強機構の一つの経路として、小胞体ストレス応答がNF-κB経路関連遺伝子に作用することが判明していた。シェーグレン症候群の主症状であるドライアイ、ドライマウスが上皮系に特異的に発症することから、昨年上皮細胞の培養系を確立した。そこで本年度は上皮細胞に着目し、NF-κB経路関連遺伝子と小胞体ストレスとの関連を検索した。その結果、この連関機構はマクロファージ特有の反応ではなく、上皮細胞においても機能していた。一方で、その感受性はマクロファージと上皮細胞では異なることも明らかになった。このことから、上皮細胞特異的な炎症応答が存在し、この炎症応答の異常な活性化がシェーグレン症候群の病態形成に関与している可能性が示唆された。 標的としているNF-κB経路関連遺伝子の欠損マウスはシェーグレン症候群様病態を示すものの、得られる産仔数が極端に少なかった。そこで安定的に欠損マウスを得られるようにするため、タモキシフェン誘導性遺伝子欠損マウスを用い、NF-κB経路関連遺伝子欠損マウスを作製した。まずタモキシフェンの薬剤効果を検討するため、タモキシフェン誘導性遺伝子欠損マウスを用いて、薬剤投与回数、濃度の検討を行った。RT-qPCR法とウエスタンブロッティング法を用いて、タモキシフェンによる遺伝子欠損誘導率および炎症経路への影響を検討した。その結果、タモキシフェンによる遺伝子欠損を十分に誘導でき、かつ炎症経路への影響を最小限に抑える投与方法や濃度が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.上皮細胞においても小胞体ストレスによる炎症応答の増強作用が機能していた。一方、その感受性は上皮細胞とマクロファージでは異なり、その理由の一つとして、炎症応答関連因子の発現量の違いであることがわかった 2.タモキシフェン誘導性遺伝子欠損マウスの作製と、遺伝子欠損を誘導するためのタモキシフェンの投与方法および濃度が確立された。 以上1,2の理由よりおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.上皮細胞における炎症応答の増強に小胞体ストレスと炎症関連遺伝子の関与が判明したので、その細胞内シグナル伝達の分子機構の解明を進める。 2.タモキシフェン誘導性遺伝子欠損マウスを用いて標的遺伝子を欠損させ、標的遺伝子欠損細胞およびマウスにおける小胞体ストレスによる炎症応答の増強機構を詳細に検索する。 3.作製したタモキシフェン誘導性遺伝子欠損マウスはシェーグレン症候群様病態を示す。このモデルマウスを用いて、シェーグレン症候群の病態進行を組織学的、生化学的に解析を行い、ヒトとの類似点、相違点などを検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
産休・育休取得により研究を一時中断していたため、次年度使用額が生じた。 使用計画は、1.上皮細胞内におけるシグナル伝達の分子機構の解明、2.タモキシフェン誘導性遺伝子欠損マウスを用いた小胞体ストレスによる炎症応答の増強機構の検討、3.シェーグレン症候群様症状を呈するマウスを用いた、シェーグレン症候群の病態進行の解析、に用いる。
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