研究課題
グラム陰性菌の外膜構成成分であるリポ多糖(LPS)は代表的な自然免疫活性化因子であり、多糖構造の末端に活性中心である糖脂質リピドAが結合した構造を有する。LPSやリピドAは、ワクチンの効果を高めるアジュバントの潜在的な候補物質であるが、代表的な大腸菌LPSは強力な炎症惹起作用に由来する強い毒性も有する。我々は、安全なアジュバントの候補物質として発酵黒酢に含まれる酢酸菌Acetobacter pasteurianus由来のリピドAに着目した。A. pasteurianusリピドAは、合成例が皆無な四糖骨格と複数の脂質から成るユニークな化学構造を有している。昨年度までに、脂質パターンの異なる3種類のA. pasteurianusリピドAの系統的合成を行い、その活性中心構造を同定することに成功した。本年度は、A. pasteurianusリピドAの機能発現の分子基盤解明を目指した。我々は、A. pasteurianusリピドAが有する特徴的なグルクロン酸構造に着目し、類縁体合成を行うことでグルクロン酸の6位カルボン酸がその自然免疫活性の鍵となる構造であることを明らかにした。さらに耐酸性評価を行い、A. pasteurianusリピドAが一般的な大腸菌リピドAと比較して優れた耐酸性機能を持ち、グルクロン酸修飾がその耐酸性に寄与することを明らかにした。A. pasteurianus LPSは、酸性糖Koを介してリピドAと多糖部が連結している。我々は、Ko修飾がリピドAの活性や耐酸性に与える影響を評価するため、A. pasteurianus Ko-リピドAの合成を目指した。2,3-ジアミノグルコースフラグメントに対して、Koグリコシル化およびマンノシル化を順次行うことで、非還元末端の三糖骨格を構築した。その後、還元末端の二糖フラグメントとのグリコシル化を行い、五糖中間体を合成した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Angewandte Chemie International Edition
巻: - ページ: -
10.1002/anie.202402922
International Immunology
巻: 36 ページ: 33-43
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