研究課題
溶液中で高効率なりん光を示す金属錯体の速度定数と比較して、現状高効率とされている有機分子のりん光速度定数は1000分の1ほどの値しかない。本研究は金属錯体に迫る大きなりん光速度定数を持つ分子を開発するものである。具体的には独自のヘテロ芳香族ジケトン骨格を基盤とし、理論に基づいた分子設計指針をもとに実際に分子を合成し、測定することにより、分子構造とりん光速度定数との相関を明らかにしていく。本年度は主に側鎖構造およびヘテロ芳香族環の構造を変更したジケトン類縁体についての検討を行った。分子科学研究所の計算機を用いて理論上のりん光速度定数を算出し、大きなりん光速度定数を示すことが期待できる分子をいくつか選定した。この候補分子についていくつか実際に合成を行ったところ、基準とするヘテロ芳香族ジケトンのりん光速度定数よりも値が向上した。またこの値は理論値との相関がみられ、当初設定した仮の分子設計指針の妥当性が支持された。なお本研究過程で合成したヘテロ芳香族環ジケトン類縁体は結晶状態において紫外光によって融解する性質を示した。この研究成果についてまとめた論文はイギリスの学術機関である王立化学会のChemical Science誌に受理され、2023 Chemical Science HOT Article collectionとして紹介、本研究成果を描いたカ バーアートはInside front coverとして採択されたほか、所属大学からもプレスリリースされた。またこの成果について1件海外で学会発表を行った。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Chemical Science
巻: 14 ページ: 5302~5308
10.1039/D3SC00838J
Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan
巻: 81 ページ: 492~500
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ChemRxiv
巻: - ページ: -
10.26434/chemrxiv-2023-h17m5
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230504_1