研究課題/領域番号 |
22J13569
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 航 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 原子価結合法 / 分子集合系 / 配置間相互作用 / 電子相関 |
研究実績の概要 |
有機開殻分子は高活性な不対電子に起因した優れた三次非線形光学(NLO)応答を示すことから、新奇なフォトニクス分野における基礎材料として注目されている。このような材料設計のために、単分子から分子集合系、バルクに至る各スケールにおいて、三次NLO物性の制御指針を確立することが求められている。本研究では、有機開殻分子集合系を統一的に扱うための、量子化学に基づく理論構築と計算・解析法を開発し、検討例の少ない分子集合系レベルでの三次NLO物性の制御指針構築を目的とする。本年度は、集合系に特有な構造因子である軌道広がりを導入し、原子価結合(VB)配置間相互作用(CI)モデルにおける定式化と量子化学計算で算出可能な定式化を行い、特に、構造因子として電子酸化状態と軌道広がり、電子状態の因子として電荷密度に着目して、集合系構造と電子状態の相関について検討を行った。その結果、有機開殻分子多量体の電子酸化状態において、軌道広がりが正電荷を多量体中央部に集める作用を持つことを見出した。さらに、この性質が有機開殻分子に限らずπ共役分子多量体に共通した性質であることも明らかにした。この性質を利用することで、分子軌道理論では説明が困難なtetrathiafulvalene分子誘導体の3量体カチオンの電荷密度分布の機構をうまく説明できることが明らかとなった。それに加え、VBCIモデルに基づき、π共役分子多量体の電子酸化状態において軌道広がりが電子状態や電子物性に大きな影響を受けうる系の条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルハミルトニアンに基づくVBCI法による各種電子酸化状態の定式化がほぼ完了し、具体系への展開が可能となった。この部分の実装は一つの重要な障壁であったため、概ね当初の予想通りに進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
有機開殻分子集合系の幾何構造および電子構造を特徴付ける4つの離散パラメータ(分子数、電子酸化数、幾何構造、スピン状態)と二量体の電子構造に依存する3つの連続パラメータ(開殻性、電荷移動性、軌道広がり)と分子集合系の電子状態や三次NLO物性の関係性について検討を行う。
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