研究課題/領域番号 |
22J20527
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩下 航 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 摩擦 / 前駆滑り / 粘弾性体 / 有限要素シミュレーション / トライボロジー |
研究実績の概要 |
本年度は、マクロ系での摩擦予測・制御を可能にするために2つの課題に取り組み、連続体解析に基づいた静摩擦の理論を導いた。 まず、1つ目の課題として、静摩擦係数の直方粘弾性体の形状・圧力依存性を調べた。有限要素シミュレーションにより静摩擦係数の系の形状・圧力に依存することを示した後に、静摩擦係数がバルク滑りの前に発生する前駆滑りの領域面積の臨界値と相関することを確認した。さらに、前駆滑りの伝搬について理論モデルの解析を行い、前駆滑りの臨界面積と静摩擦係数の直方粘弾性体の形状・圧力依存性を明らかにした。この成果については国際学会での発表を行い、投稿論文も出版されている。 次に2つ目の課題として、1つ目の課題の成果を実際の摩擦制御への応用につなげるために、設計の自由度がより高い、縦溝付き粘弾性体の静摩擦の形状依存性を調べた。有限要素シミュレーションにより、溝の幅が大きく、溝が深いほど静摩擦係数が減少することを明らかにした。また、1つ目の課題と同様に静摩擦係数が前駆滑りの挙動と相関することを明らかにした。さらに、理論モデルの解析により、溝によって実効的な粘性が減少することが静摩擦係数の減少の原因であることを明らかにした。従来は溝設計による潤滑特性の制御に着目されてきたが、潤滑がない場合にも溝が摩擦特性に影響することを明らかにした本研究の結果は、靴底やタイヤなどの最適な溝設計への寄与が期待される。この内容について現在論文を作成中であり投稿間近である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーションと理論解析によって、マクロ系の静摩擦の理論を構築することができた。国際学会での専門家との意見交換や論文としての成果発表を行うことができ、順調に進展していると考える。溝付き粘弾性体の摩擦の研究については、当初は予定していなかったが、試験的に実施したシミュレーションで興味深い結果が得られたため、追加のテーマとして実施した。その結果として、工学的な応用にもつながるような成果が得られ、論文投稿間近となっている。
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今後の研究の推進方策 |
マクロ系の静摩擦の理論の研究成果について国際学会での発表で、専門家との議論を行い、研究の発展につなげる。また、これまでの静摩擦の解析によって応力の非一様性が前駆滑りや一様系の摩擦則の破れの原因となることが明らかになったが、有限速度下での非一様系の滑りや動摩擦は未解明である。よって、有限要素シミュレーションを用いて有限速度に対するマクロ系の摩擦の依存性も調べる。変形状態や応力の解析からマクロ系の動摩擦の理論を構築することを目指す。
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