研究課題/領域番号 |
22J20544
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 明日香 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 左右非対称性 / キラリティ / ミオシン / 細胞骨格 / 発生生物学 |
研究実績の概要 |
2022年度では、後腸の捻転方向に関して、Myo31DFによる野生型形態、およびMyo61Fによる鏡像型形態を決定する、ミオシンの構造上の領域を同定することを目的とした。I型ミオシンであるMyo31DF、Myo61Fの構造は、アクチンフィラメントと結合するヘッドドメインと、IQ・テールドメインに大きく分けられる。先行研究より、ヘッドドメインが、Myo31DFとMyo61Fの、後腸の捻転方向を決定する活性に重要であることが示唆されている。本研究では、ヘッドドメインの中でも、アクチン動態を制御すると考えられる領域(アクチン結合領域)に着目し、これら2つのミオシン間で、アクチン結合領域の入れ替えを行い、後腸の捻転方向を決める活性が入れ替わるか検証を行った。アクチン結合領域がMyo31DFのものであるMyo61F、およびアクチン結合領域がMyo61FのものであるMyo31DFのそれぞれのキメラミオシンを、GAL4/UASシステムを用いてショウジョウバエ胚で発現させるためのUAS系統を作出した。これらのキメラミオシンを、後腸特異的に強制発現させた結果、領域を入れ替えることで捻転方向を決める活性も同時に入れ替わったことが明らかになった。これらの結果から、アクチン結合領域は、Myo31DFとMyo61Fの捻転方向を決定する活性に十分であることが示唆された。今後、後腸上皮細胞のキラリティ形態解析、およびショウジョウバエ血球細胞を用いたアクチン動態のライブイメージング観察についても同様の実験を行い、アクチン結合領域が器官、細胞の各階層におけるキラリティ形成において重要であることを示したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着目領域を入れ替えたMyo31DF、Myo61Fのキメラミオシンを、GAL4/UASシステムを用いてショウジョウバエで発現させるトランスジェニック系統の作出に成功した。これらの系統を用いることで、キメラミオシンを様々な組織で異所的に発現させ、解析を行うことが可能になった。2022年度では、後腸特異的にこれらのキメラミオシンを発現させ、Myo31DF、Myo61Fの捻転方向を決めるそれぞれの活性に十分な領域の同定に成功した。一方で、この領域が、それぞれの活性に十分な最小領域であることは確かめられていない。よって、全体として、おおむね順調に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、Myo31DF、Myo61Fの、後腸捻転方向の決定に関するそれぞれの活性に十分なタンパク質構造上の領域を同定した。この領域が、後腸上皮細胞のキラリティ形態決定においても十分な領域であるか検証を行う。さらに、先行研究より、ショウジョウバエ幼虫より採取し培養した血球細胞において、アクチン動態が、Myo31DF、およびMyo61F依存的に、それぞれ時計回り、反時計回りのキラリティを示すことが明らかになっている。この実験系を用いて、キメラミオシンを血球細胞特異的に発現させ、同定した領域が、Myo31DF、Myo61Fのそれぞれのミオシンによるアクチン動態のキラリティ形成に十分であるか検証する。 また、今回同定した領域よりさらに絞り込んだ領域に着目し、2つのミオシン間で入れ替え実験を行うことで、それぞれのミオシンのキラリティ決定に関する活性に十分な最小領域を探索する。
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