研究課題/領域番号 |
22J20794
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保田 満聖 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | RNA修飾 / RNA分解 / オートファジー / 出芽酵母 / 細胞外排出 |
研究実績の概要 |
RNAは細胞にとって非常に重要な生体分子であり、その合成と分解は精巧な仕組みによって適切に制御されている。近年、RNAがオートファジーによって分解され、分解産物のヌクレオシドが細胞外に排出されることが示唆された。一方でRNA種の中の転移RNAのオートファジーによる分解の実態、分解産物の中の不要物である修飾ヌクレオシドの排出機構は不明である。 申請者はこれまでの研究からオートファジー誘導条件において、転移RNA特異的な修飾ヌクレオシドやその他の修飾ヌクレオシド種がオートファジーに強く依存して細胞外に排出されていることを見出した。 本年度は約5,000株の出芽酵母の非必須遺伝子欠損ライブラリーを用いて、オートファジー誘導条件での細胞外に排出される修飾ヌクレオシド量を指標とした網羅的なスクリーニングを行った。この解析結果から修飾ヌクレオシドの細胞外排出が抑制されている変異体を見出し、転移RNAの分解、修飾ヌクレオシドの細胞外排出に関与すると想定される候補遺伝子をいくつか同定した。さらにこの網羅的なスクリーニングの結果の妥当性を確保するため、再度候補遺伝子欠損細胞を作成して再現性を確認した。またRNAのオートファジー分解から修飾ヌクレオシドの細胞外排出までの一連の過程の中で、スクリーニングから得られた候補遺伝子がどのように関与しているかを明らかにするための実験を開始しており、これによって転移RNAを含めたRNAのオートファジー分解から修飾ヌクレオシドの細胞外排出の詳細な分子機構を明らかにできると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究から、転移RNA特異的修飾ヌクレオシドやその他の共通の修飾ヌクレオシドが、オートファジー誘導条件においてオートファジーに強く依存して細胞外に排出されていることを見出してきた。本年度は転移RNAの分解と修飾ヌクレオシドの排出に関与する遺伝子を同定するため、約5,000株の出芽酵母非必須遺伝子欠損ライブラリーを用いた網羅的なスクリーニングを行った。スクリーニングの結果から修飾ヌクレオシドの排出が抑制される変異体を複数同定した。さらにこの結果の妥当性を確認するため、候補遺伝子欠損細胞を再度作成し、既に一部の候補遺伝子ではその結果の再現性の確認も完了している。さらにRNA分解の場である液胞を遠心分離法によって単離し、いくつかの候補遺伝子欠損細胞についての液胞内容物の解析を開始しており、RNA分解後の液胞外排出に関与する遺伝子を探索している。当初予定された網羅的なスクリーニングとその結果の再現性の確認を完了し、候補遺伝子の寄与メカニズムの解析まで進行している。以上のことから研究課題は順調な進捗を見せていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた候補遺伝子について、RNA分解ー修飾ヌクレオシド排出のどの過程に関与しているかを解析する。オートファジーを介したRNA分解では、RNAが分解酵素を豊富に含んでいる液胞内へと輸送されることによって液胞内のRNA分解酵素により分解される。このことから一連の過程が、(1) RNA合成、(2) オートファジーによるRNAの液胞輸送と分解、(3) 修飾ヌクレオシドの液胞外排出、(4) 修飾ヌクレオシドの細胞外排出の主に4つのプロセスに分けられると考えている。そこで候補遺伝子欠損細胞についてのRNA量の解析 (1)、分解の場である液胞内容物の中のRNA量 (2) と修飾ヌクレオシド量 (3)、細胞質成分中の修飾ヌクレオシド量 (4) を解析することによって、候補遺伝子がどの過程に関与しているかを検討する。さらに液胞内でRNAの分解に作用する液胞内RNAase (RNY1) と候補遺伝子を欠損させた二重欠損細胞での液胞内転移RNA特異的修飾ヌクレオシド量を解析することで、転移RNAの液胞内輸送に関与する遺伝子を探索する。 このように得られた候補変異体を分類分けすることで、RNA分解から分解産物である修飾ヌクレオシドの細胞外排出までの分子機構の解明を目指す。
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