研究課題
量子ネットワーク構築に向けて以下の研究を行った(1)一昨年度はタンデム型type-2疑似位相整合したPPLN導波路を連続光で励起し、偏光自由度で量子もつれを有することを確認した。これについて昨年四月の国際学会で口頭発表した。昨年度は二光子干渉を見据えてこの励起光をピコ秒のパルスレーザーに代えて実験を行った。この場合、タンデム型であることに起因した群速度遅延の影響で発生光子対の忠実度が下がってしまうという問題がある。このような状況で合っても、バンドパスフィルタで各光子の帯域を制限してコヒーレンス時間を延ばし、群速度遅延の影響を抑制することで、発生した光子対が90%を超える忠実度を有することを確認した。(2)今後量子インターネット実現に向けて物質量子系から発光された光子の周波数をファイバネットワークに適したそれに変更する、量子周波数変換(QFC)を行う必要がある。そこで、NTTにおいて開発されたファイバベースでQFCを行うモジュール(4-port fiber-pigtailed QFC module)の性能評価を行い、さらにこれを用いた単一光子のQFC実験を実証した。この成果は論文として出版した(Opt. Express 31, 18, 29271-29279 (2023))。(3)変換光にのみ共振器構造を持ったPPLN導波路を用いてQFCを行う実験にも取り組んだ。この実験によって、変換光の量子性を下げる原因であるラマン散乱光が共振器に共鳴した周波数構造を持ち、帯域の広いバンドパスフィルタのみで高い信号雑音比を得られる可能性を示した。この結果は昨年秋に行われた国内研究会で発表した。
3: やや遅れている
提案したタンデム型PPLNを用いた量子もつれ光子対源の研究のみでなく、三体相関を持った多光子状態の作成にも取り組んでいる。また、長距離量子通信の実現を目指して全光量子中継器の作成のみでなく、物質量子系とインターフェースである量子周波数変換にまで研究の領域を広げているため、元の計画から少し遅れている。
パルス励起を用いてタンデム型type-2疑似位相整合PPLN導波路からエンタングル光子対を生成することには成功している。今後はこの光子対源二つから発生させたシグナル光子どうしを二光子干渉させ、さらに光子対同士のエンタングルメントスワッピングも行うことを目指す。また、今後さらに大規模な量子もつれ状態を作成するためには三光子を同時に発生させることが大事であると考え、現在はそれにも取り組んでいる。この状態を拡張して三体の偏光量子もつれ状態を作ることができれば、ベル測定と呼ばれる操作のみで量子もつれ状態を拡張していくことができるため、多光子量子もつれ状態の作成、そして全光量子中継プロトコルの実証を目指した本研究の目標に非常に合致したものである。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Optics Express
巻: 31 ページ: 29271~29271
10.1364/OE.494313