研究課題/領域番号 |
22KJ2203
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大須賀 智輝 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 脳幹網様体 / 巨大神経網様核細胞 / 神経回路 / Glu/GABA 共発現細胞 / ニューロン / 意識 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
脳幹網様体は覚醒状態の維持に関与する領域であり、多くの細胞群から構成されている。なかでも巨大神経網様核(NRG:nucleus reticular gigantocellularis)細胞は、すべての感覚刺激に対して応答し、覚醒や運動制御も担うことが報告されている。さらにNRG細胞には、単一神経細胞で上行性と下行性両方へ投射する細胞が存在することから、このNRG細胞が意識形成の要となっていることが予想される。興味深いことにNRG細胞は、興奮性伝達を担うグルタミン酸作動性、抑制性伝達を担うγ-アミノ酪酸(GABA)作動性だけでなく、グルタミン酸・GABA両作動性神経細胞の存在が明らかになっている。これまで覚醒・意識制御におけるNRG細胞の重要性が報告されていながら、そのNRG細胞の詳細な分類は技術的な困難もありほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、NRG細胞を分子生理学的に詳細に解析することでマルチモーダルな情報統合と随意運動の制御を行うNRG細胞種を同定し、その細胞活動を人為的に操作することで、覚醒したマウス個体の意思決定や行動制御にかかわる神経回路を明らかにすることを目的とする。これまでに、NRG細胞のうち、他領域でも重要性が報告されているグルタミン酸・GABA共発現細胞に焦点を当て、これらの細胞でflox/frt組み換え依存的にtdTomatoが発現するマウスを作製することで、NRG細胞の中でも少数存在する(40~60個程)グルタミン酸・GABA共発現NRG細胞(GABA/Glu NRG細胞)を同定することに成功した。これらの細胞は全脳透明化技術を用いて3次元的に詳細に解析した。さらに、シナプスを介して逆行性に感染する狂犬病ウイルスをGABA/Glu NRG細胞特異的に感染させ、これらの細胞に投射する細胞群の局在が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りグルタミン酸・GABA共発現細胞でtdTomatoが発現するマウスを作製することに成功し、NRG細胞の中でも少数存在する(40~60個程)グルタミン酸・GABA共発現NRG細胞(GABA/Glu NRG細胞)を同定することができた。これらはIn Situ HCR によるmRNA標識を用いて同時に共発現することも確認できている。さらにそれらの細胞で特異的に狂犬病ウイルスを感染させ、投射経路を明らかにすることに成功した。今後は共発現が機能的にどのような意義を持つのかについて明らかにしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
flox/frt組み換え依存的に感染させることのできるアデノ随伴ウイルスを用いて、GABA/Glu NRG細胞特異的にチャネルロドプシン2(ChR2)とiC++を発現させ、光遺伝学的に細胞を活性・抑制することで覚醒や運動制御へのGABA/Glu NRG細胞の関与を明らかにする。さらに、ホールセルパッチクランプ技術によりGABA/Glu NRG細胞の電気生理学的な特徴の解析を行った後、細胞質を吸引しRamDA-seq法を用いてRNA解析を行い、遺伝子発現プロファイルを同定する。前者は実験環境の構築をすでに終えており、今後個体の行動変異を観察していく。後者はRNAの回収を終えており、今後解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
光遺伝学手法を用いた光刺激のための動物手術物品を計上していたが,今年度は手術する動物の匹数が少なかったため,予定していた額を下回った。また,英語論文についての校正費は今年度末までに投稿準備が完了しなかったため,計上しなかった。これらは来年度に実施する予定であり、その際に使用する計画である。
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