研究課題
本研究の目的は、レーザー光の「集める・並べる・壊す」といった工作的側面を駆使し、高機能材料を作製することである。令和4年度はそのファーストステップとして、レーザー光の破壊的機能(レーザーアブレーション)に着目し、レーザーエネルギーとパルス時間幅が結晶核発生や種結晶の生成に与える影響を調べた。結晶核発生現象においては、水を対象として研究を行い、従来で良く用いられていたフェムト秒レーザー(~ 100 fs)よりも、ピコ秒レーザー(特に5 ps付近)の方が、より結晶を発生させられることを見出した。特に、氷の場合はピコ秒レーザーの単発照射で結晶が発生することがわかり、これによってバルク中としては世界トップレベルの時空間分解能(マイクロ秒、マイクロメートルスケール)で氷の結晶化過程を観察することができた。また、種結晶の生成においては、次世代のテラヘルツ波発生素子として応用が期待されている有機非線形光学結晶(DAST)を対象として研究を行った。パルスレーザーによって過飽和溶液中のDAST結晶の端を局所破壊したところ、新たにDASTの種結晶が生成することを見出した。生成する種結晶の個数は、レーザーエネルギーが高くなるほど、そしてパルス時間幅が長くなるほど多くなる傾向にあった。高速カメラを用いて種結晶化過程を観察してみると、結晶のアブレーション閾値よりもはるかにレーザーエネルギーが高くなると、結晶のレーザーアブレーションのみでなく、蒸気バブル(キャビテーションバブル)の生成が種結晶化に寄与しだすことがわかった。得られた種結晶の非線形光学特性(テラヘルツ波発生能)が保持されていたことから、レーザーアブレーションによって結晶の性能は失われないことがわかった。以上の成果は複数の国内外の学術会議にて発表した。また、現在投稿に向けて論文を執筆中である。
2: おおむね順調に進展している
年度当初に予定していたレーザー条件の探索に関して成果を得ることができ、国内外への学術会議での発表に至っている。また、本成果をもとに、現在他の有機材料への応用も進めているため、本成果は順調に進展しているといえる。
今後もレーザーパラメーターが結晶化現象(例:多形相転移)に与える影響を調べるとともに、種々機能材料への応用を試みる予定である。
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