研究課題/領域番号 |
22KJ2220
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
玉置 弦 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | トポロジカル物質 / グラフェンナノリボン / トポロジカル絶縁体 / 電子間相互作用 / 秩序構造 / 2軌道ハニカムモデル |
研究実績の概要 |
2023年度は、昨年度明らかにした2軌道ハニカムネットワークに現れる秩序構造が安定化する理由の解明を目的として研究を進めた。結果として、一定の近似の下で特定の秩序構造が生じる理由を多体状態の観点で明らかにした。初めに、2軌道ハニカムネットワークにおいて電子間相互作用を考慮しない場合、グラフェンと同様のバンドとそれに接する平坦なバンドが2枚存在する、砂時計バンドが現れる。この平坦バンドは、空間的に6siteに局在した状態(6site局在状態)の集合として理解できる。次に、電子間相互作用が存在する場合を考える。fillingが小さい場合、6site局在状態が重複しないように電子が充填される。理解が困難となるのは、fillingを大きくし、6site局在状態が重複しないように配置できなくなった場合である。昨年度は各サイトで平均場近似により明らかにしていたが、今年度は6site局在状態の充填方法で理解することを試みた。電子間相互作用が小さい場合、平坦バンドにどのように電子が充填されるかを理解することが秩序構造の理解につながるため、6site局在状態から理解することが重要である。結果として、平坦バンドを部分的に占有する全てのfilingにおいて、秩序構造及びその理由を明らかにすることができた。この結果は、昨年度に離散的なfillingにおいて求めた平均場近似の結果と整合しており、理論の拡張に成功した。ただし、今年度に求めた構造は、重ね合わせを考慮しておらず、重ね合わせによってさらに安定な秩序構造が現れる可能性があり、理論拡張の余地が残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平坦バンドを持つ2軌道ハニカムモデルの多体状態を理解できた。さらに、グラフェンナノリボンによるネットワークを超えて、2軌道ハニカムモデルの理論へと発展した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度行うことができなかった重ね合わせも考慮して基底状態を理解することなど、平均場近似を超えた理解に取り組むことにより、エキゾチックな量子多体現象の理解/解明を目指す。また、これまでに得られた成果は、当初ターゲットにしていたグラフェンナノリボンネットワークだけでなく、他の物質、例えば近年精力的に研究されている積層モアレ系への応用へと広がりを見せており、今後は幅広い物質に応用できる理論も視野に入れて研究を進めていく予定である。
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