研究課題/領域番号 |
22KJ2222
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
潤井 泰斗 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | ロドプシン / ラマン分光法 / タンパク質ダイナミクス |
研究実績の概要 |
タンパク質の構造と機能の関係を明らかにすることは重要な課題である。光駆動型イオンポンプロドプシンについては、これまでに内向きプロトンポンプと外向きプロトンポンプが発見されている。これらは共通して7本のαヘリックスとレチナール発色団を持つが、プロトンの輸送方向は反対の向きである。光反応から始まるレチナール発色団の構造変化に着目し、内向きと外向きプロトンポンプでの違いを比較することで、プロトンの輸送方向を決定する因子を明らかにすることを目的とした。 時間分解共鳴ラマン分光法を用いて、内向きプロトンポンプであるシゾロドプシンのプロトンの放出と受取過程におけるレチナール発色団の構造変化を明らかにした。放出過程において、内向きプロトンポンプと外向きプロトンポンプでレチナール発色団の捻れに違いがあることが明らかになった。また受取過程において、再プロトン化と再異性化の順序が異なることを明らかにした。これにより、レチナール発色団のシッフ塩基における孤立電子対の向きが、内向きプロトンポンプでは細胞外側に、外向きプロトンでは細胞内側に向き、プロトンの輸送方向とシッフ塩基の向きを合わせていることが分かった。このように、プロトンの輸送方向に重要な因子を放出と受取の過程で明らかにした。また、7種類のシゾロドプシンを系統的に調べることで、シゾロドプシンの未反応状態での、シッフ塩基における水素結合強度と吸収極大波長、発色団の捻れの関係についても明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質の培養方法、精製方法は確立し、問題なく試料を得ることが出来ている。また、時間分解ラマン測定装置も安定して稼働している。プロトン輸送の方向を決める重要な因子を明らかにし、それを論文化した。
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今後の研究の推進方策 |
シゾロドプシンで観測された発色団の再プロトン化前の再異性化が起こるメカニズムを変異導入した試料を用いて明らかにする。2023年に外向きプロトンポンプにシゾロドプシンに近づける変異を加えると、内向きプロトンポンプへと機能転換することが明らかになった。このタンパク質の発色団構造の変化を明らかにし、アミノ酸配列と構造、そして構造と機能の関係を明らかにする。
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