研究課題/領域番号 |
22KJ2223
|
配分区分 | 基金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
揚村 朋弥 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
キーワード | 関節リウマチ / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
関節リウマチは、滑膜の病変を主座として手指や膝の関節に慢性的な炎症と骨破壊を引き起こす自己免疫疾患である。関節リウマチにおける骨破壊は、"骨を食べる"機能を持つ破骨細胞によって引き起こされる。破骨細胞は、単球・マクロファージ由来の多核巨細胞であり、定常状態では"骨を作る"骨芽細胞と共に骨の恒常性を維持している。これまで、関節リウマチにおける骨破壊は、定常状態に存在する破骨細胞が異常に活性化することで引き起こされると考えられていた。しかし近年、関節炎における破骨細胞は定常状態の破骨細胞とは分化経路や機能が異なる、謂わば"悪玉"の破骨細胞であることが明らかになった。関節炎モデルマウスを用いた解析の結果、骨髄内には存在しない特殊なマクロファージ集団が炎症滑膜に存在し、高い破骨細胞分化能を持つことから、関節炎特異的な破骨前駆細胞であることが同定された。また、関節炎において悪玉破骨細胞について解析したところ、本来抗原提示細胞が保有している機能分子を発現していることが明らかになった。そこで本研究では、炎症滑膜内で病的に骨破壊を惹起する悪玉破骨細胞が、本来保有していないはずの機能分子を発現している意義について解明することを目的とした。前年度は、関節炎特異的な破骨前駆細胞のシングルセルRNAシーケンシング解析を行い、定常状態の破骨細胞分化とは異なる、特徴的な分化様式が示唆された。本年度は、この分化様式の詳細なメカニズムについて解析し、シングルセルRNAシーケンシング解析を行う中で新たに同定した細胞集団についてより詳細な解析を行う。これらの計画を通して、悪玉破骨細胞が機能分子を発現する意義・メカニズムについて明らかにする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルセルRNAシーケンシング解析を通して、悪玉破骨細胞の特徴的な分化様式の概形を明らかにした。さらに、関節炎の病態に関与する可能性がある新規細胞集団を同定したため、本年度は概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、シングルセルRNAシーケンシング解析を元に関節炎特異的な悪玉破骨細胞の分化様式についてより詳細な解析を行う。また、新たに同定した関節炎の病態に関与する可能性がある細胞集団についても解析を行う。これらの細胞集団に特異的なマウス系統を用いることで病態への関与を証明すると共に、悪玉破骨細胞が形成されるメカニズムについて総括的に明らかにすることを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3月末に開催された次世代リーダー育成スクール2024に参加するための旅費申請を行う予定であったが、予算執行期限後に上記研究会が開催されたため、旅費相当額を次年度に持ち越し、予算執行をおこなう予定である。
|