研究実績の概要 |
「新規多価カチオン種による元素埋め込み反応を利用した三次元パイ共役分子の迅速構築」を目指し、今年度は、リンジカチオン等価体とアリールアルキンとのC-P/C-C連続結合形成反応を利用したベンゾホスホール誘導体の合成法の開発を試みた。我々はこれまでにリンジカチオン等価体と単純ビアリールのC-P結合連続形成反応によるジベンゾホスホールの一段階合成を達成している。しかし、この手法はインドールやチオフェンなどの電子豊富なヘテロ芳香環部位を必要とする制限があった。そこで本研究では、アルキン部位を反応の足掛かりとするリンジカチオン等価体とアリールアルキンのC-P/C-C連続結合形成反応を利用することで、電子豊富なヘテロ環に依存しない縮合含リン化合物の合成を目指した。その結果、ルチジン存在下、DCE中でアリールアルキンに対して、リンジカチオン等価体を作用することで縮合含リン化合物を効率的に構築できることを見出した。また、電子求引性置換基であるホスフィンオキシドの導入は、求核種の反応性を著しく低下させるために、三次元パイ共役分子であるヘリセン骨格を形成するうえで重要となる二重環化反応が困難であったが、アリール上にCF3基を有するホスフィン酸を用いることで、反応性の高いリンジカチオン等価体が発生可能であることを見出し、このリンジカチオン種を利用することで二重環化反応も達成した。また、これらの成果を国際誌(Org. Lett. 2023, 25, 1503-1508. )に投稿した。
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