研究課題
2021年度は一様磁場のかかったT^2/Z_2オービフォールド模型における世代数構造(Atiyah-Singerの指数定理)を明らかにした。T^2/Z_2オービフォールド模型はトーラスの並進とZ_2回転の下での同一視により、動かない点(固定点)が存在する。この固定点に座標を定義することはできず、特異点になっている。通常、Atiyah-Singerの指数定理は滑らかな多様体に対して適用されるため、特異点を持つオービフォールド模型には直接適用できない。そこで、トレース公式を用いて指数(世代数)を具体的に計算することにより、具体的表式を求めた。その結果、固定点における余剰次元関数のwinding numberが重要な役割を果たしていることが明らかになった。winding numberとは余剰次元関数の境界条件によって得られるもので、整数値をとる。滑らかな多様体の指数定理と比較すると、固定点の寄与がwinding numberとして追加で現れている。オービフォールド模型では固定点というある種の境界があるため通常は消えてしまう項が値を持ち、このように固定点の寄与が追加で現れる。本研究結果により、一様磁場のかかったT^2/Z_2オービフォールド模型における世代数は一様磁場の磁束量子化数に加えて、固定点のwinding numberによって決定されることが明らかになった。また、研究結果について国内・国際研究会において研究発表を行なった。
2: おおむね順調に進展している
世代数問題を解決するには2段階のステップが必要である。まずは複数の世代数構造を持つ余剰次元模型は何かを探索することである。その余剰次元模型において、何によって世代数が決定されるかの構造を明らかにする必要があるが、本年度の研究成果は一様磁場のかかったT^2/Z_2オービフォールド模型における世代数構造を明らかにすることができた。その上で、世代数を決定するパラメータがどのように決定・制限されるのかを検証する必要がある。これは今後の研究で明らかにしていきたい。
一様磁場のかかったT^2/Z_N(N=3,4,6)オービフォールド模型における世代数構造(指数定理)を明らかにする。T^2/Z_2オービフォールド模型の余剰次元関数は比較的シンプルだが、T^2/Z_N(N=3,4,6)オービフォールド模型は余剰次元関数の構造が複雑であるため、指数(世代数)の具体的計算は複雑になることが予想されるが、これに取り組む。
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